第1の質問:時間をいかに管理するか

 スラックのメッセージ、顧客トラブル、従業員間の問題など、リーダーが目の前のカオスに対処しつつ、未来への扉を開くための時間を捻出するには、どうすればよいのか。一刻の猶予もないと感じる日々のタスクに圧倒されることなく、どうすれば真に重要な革新的イニシアチブを前に進められるだろうか。

 これらの問いに対する答えを探すには、まず組織としても個人としても、未来のための時間を確保する具体的な方法を見つけ出すことから始めなくてはならない。

 古きよき米国を象徴する工業ブランドWD-40のCEOギャリー・リッジは、誰もが今日の業務を機敏に遂行することに集中するあまり、明日を決定付ける画期的なイノベーションの機会を逃しているのではないかと懸念した。そこでリッジは、R&D、マーケティング、財務の各部門のシニアエグゼクティブから成る「チーム・トゥモロウ」という小グループを創設し、これから10~15年先を見据えて心躍る機会を探る、という課題を与えた。

 この小グループは、巨額の予算が与えられるような独立したイノベーション部門ではなかった。経験豊富なエグゼクティブで構成され、それぞれが現在の責務から一時的に解放されたことで、今後数十年にわたりWD-40を形づくるアイデアを見つけ出すことができた。

 エグゼクティブは順番にこのチームに参加し、現在から未来へ、そして未来から現在へと焦点を移動させる作業を繰り返した。その結果として生まれた一連の製品やテクノロジー、ブランドイノベーションが、同社の業績を押し上げたのである。

 オンラインサービスの「ロケットモーゲージ」を提供する、米住宅ローン大手クイッケン・ローンズは、より草の根のアプローチを採用した。未来に向けた取り組みを実現するために、同社は毎週月曜日の午後1時から4時までを未来のための時間として確保している

 この時間は、プログラマーもアプリ開発者もメールに返信せず、コードの更新もパフォーマンス評価も行わない。その代わり、現在の責務とは関係ないが、未来への破壊的変化と大いに関係するようなアイデアに着手する。また、すべての階層の従業員が未来に向けて取り組む時間を確保できるよう、この時間帯は全員のカレンダーをブロックし、他の予定を入れられないようにしている。