第3の質問:一般従業員の士気をどう高めるか
現在の状況では、誰しも不安にかられ、気分が落ち込みがちだ。リーダーはどうすれば、従業員を明るくエネルギッシュな状態に保つことができるだろうか。従業員に対して、彼らの時間の多くを仕事に費やすことを求めるならば、リーダーはせめて従業員が仕事を楽しめるようにすべきではないだろうか。
これらの問いに対する答えは、あまりに多くの組織で失われたものを、従業員が再発見できるよう支援することで見つかるはずだ。日々の仕事を遂行する中で感じる喜びや楽しさ、有意義なイノベーションに感じる醍醐味である。
たとえば、これは新型コロナウイルス感染症のパンデミック前に書かれたものだが、医療従事者の士気に関する著名な報告書には、医師の半数以上がバーンアウトの兆候を示し、新たに登録された看護師の3分の1が1年後に転職を考えていたと記されている。「医療従事者のバーンアウトを臨床医学や公衆衛生の用語で表すならば、エピデミックと呼ぶのがふさわしいだろう」と、この報告書は結論付けている。コロナ禍でバーンアウトがどれほどまん延しているかは、推して知るべしだ。
医療従事者の良心ともいうべき「米国医療の質改善研究所」(IHI)が、仕事の喜びと幸福度を高める包括的プログラム「ジョイ・イン・ワーク」を創設したのは、それが理由だ。同プログラムを率いるジェシカ・パーロは、リーダーにとって極めて重要な仕事の一つは、従業員が「靴の中の小石」を取り除くのを助けることだという。つまり、エネルギーや喜びを奪う日々のいら立ちの原因や、侮辱的な待遇を改善することだ。
多くの医療現場に見られる問題の原因は、「破綻した人々」にあるわけではない。もちろん、そのような人々を見つけるのは簡単だが、問題は破綻した人々を生み出す「破綻したシステム」にあるとパーロは指摘する。
これは、医療以外の多くの職場にも当てはまるだろう。私たちは賢いはずなのに、なぜこれほどまでに仕事に喜びを見出せないのだろうか。仕事に喜びがなければ、「成果を上げつつ、変革する」という困難な仕事に取り組めるはずもない。
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大企業を経営するにせよ、少人数のチームを任されるにせよ、リーダーがいまほど厳しい局面に立たされたことがあるだろうか。その答えはわからないが、本稿で紹介した3つの質問の答えを編み出すことができれば、この時代にリーダーとして課せられた「試験」に、きっと合格できるはずだ。
"How Leaders Can Balance the Needs to Perform and to Transform," HBR.org, January 10, 2022.