(1)従業員自身にキャリア開発をうながす

「企業が実践できる最も賢明かつ戦略的な取り組みの一つは、特定の職務や要件だけに適した従業員を採用することではなく、ビジネスの変化に合わせて自分自身を変えられる人材を見つけることだ」とポスニックは言う。そのような従業員は、自分が社内でどう成長していきたいかを理解していることが多く、そこに到達するためのツールを必要としていると、彼女は説明した。

 世界に4000人以上の従業員を擁するセンゲージでは、「キャリアは従業員がコントロールし、マネジャーがサポートして、会社が実現させる」とローは言う。彼女のチームと現場のマネジャー、組織のリーダーが協力して、個人の関心事、業務上の目標、そして組織のギャップを結び付け、アップスキリングにつながる人材開発をどのように追求すべきかを決定している。ただし、あらゆる取り組みは従業員がみずから主張することから始まる。

 それを可能にするために、センゲージのマネジャーは毎週、直属の部下と有意義な1対1のミーティングを行うよう教育されている。従業員はミーティングの場で仕事上の関心や目標について話し合い、必要に応じて上司のサポート(人の紹介、参加すべきプロジェクトなど)を得るために主張する。

 業務でそのような機会が得られない場合は、HR部門が提供する多数のアップスキリング・プログラムに参加できる。プログラムがない場合は、人材研修の将来的な導入が検討される。

 保険会社のジョン・ハンコックは、「パースート・ラーニング・ハブ」と呼ばれるオンラインのラーニングセンターを提供し、従業員の個人的な能力開発と仕事上の能力開発を行うためのさまざまなコースを用意している。マネジャーが直属の部下に、組織目標や今後の活動と関連するトピックを勧めることもあるが、従業員は自分の興味がある講座を選択することができる。

 受講回数に制限はなく、毎月2回、午後に有給で参加することが可能だ。同社によると、従業員が能力開発に費やした時間は、2021年10月だけで合計1万2000時間に上る。

 従業員は研修プログラムの正式名称は知らないかもしれないが、自分がもっと学びたいこと、挑戦したいこと、管理したいことは知っている。彼らにいま力を与えれば、将来的に仕事をリードする可能性が生まれる。アップスキリング・プログラムは、そのようなエンパワーメントとトレーニングの中核を成すものだ。