(2)従業員の要望に応える
筆者らがよくクライアントに伝えているのは、従業員の要望に応えなかったのなら、彼らが会社を辞めても責めることはできないということだ。従業員にアップスキリングに関する意見を求める場合、自分たちの意見がどのように処理されたかを伝えることが重要だ。さらに重要なのは、リーダーがその意見を採用することである。
筆者らが話を聞いたあるHR担当幹部は、企業のリーダーは常に「フィードバックや調査の中で繰り返し浮上するテーマを特定し、そのテーマに関連するデータを集約して、業務上の目標や人材開発の目標に合ったアップスキリングの選択肢を、いつ、どのように提供するかを決定」すべきだと述べた。
従業員215人ながら2億ドルの売上げを誇るメディカスにおいて、「離職は事業に悪影響を及ぼす」とポスニックは説明する。ある職種で退職者が増加した時は、人材開発チームが退職理由に関する従業員のフィードバックを収集し、実際に改善した。
ポスニックのチームは事業担当者と協働し、従業員のライフサイクルの重要なタイミングでアップスキリングを強化するために、障害と機会になる要因を特定した。そのうえで4週間のプログラムを作成し実施したところ、従業員の定着率が50%向上した。
センゲージでは、アップスキリング・プログラムの欠陥が特定されると、その内容をHRビジネスパートナー(HRBP)に伝え、HRBPがトレンドやテーマをHR部門や事業部門のリーダーに伝えている。自分たちが何を追求し、全社的なアップスキリングプログラムに何を加えるかを共同で決定して、新たな選択肢として組織全体に伝達されるのだ。
個人の目標と組織の人材開発戦略を一致させることは、大きなリターンを期待できる投資だ。センゲージが半年に1回実施する調査によると、従業員は同社で働くことを誇りに思っており、離職率は低く、従業員エンゲージメントのスコアはここ数年で最も高くなっている。