思い込み(2) 過去のパフォーマンスが将来のパフォーマンスを予測する

 心理学の基本的な考え方は、過去の行動が将来の行動を予測するというものだ。したがって、現在のハイパフォーマーが将来も優れたパフォーマンスを発揮するという思い込みから、組織がハイパフォーマーにさらなる能力開発の機会を与えるのは驚きではない。

 しかし、この前提の落とし穴を示す、次の2つのシナリオを考えてほしい。

 1つ目は、「ピーターの法則」だ。すなわち、組織に見られるような階層構造の中では、個人が「無能」と見なされるレベルまで昇進してしまう傾向がある。

 従業員がある役割でよい成績を上げると、より複雑な役割を担うために昇進することが多い。このようなパフォーマンスを上げて昇進するというサイクルが繰り返されることで、その従業員は最終的に、それまで以上のパフォーマンスを発揮できない役割まで上りつめる。

 このように、昇進が過去のパフォーマンスだけに基づいていると、組織内のすべての役割に対して、高レベルのパフォーマンスを発揮できない人が就くことになりがちだ。

 2つ目は、仕事の未来が混乱していることだ。世界経済フォーラムによる「仕事の未来レポート2020」では、2025年までに自動化と技術進歩により8500万の雇用が失われ、同時に9700万の雇用が新たに創出されると予測している。

 その結果、組織は役割が定義されていない仕事のために個人を特定し育成するという課題に、ますます向き合うことになる。将来就く可能性のある役割に関して、従業員がどのようなパフォーマンスを発揮するかを予測するうえでは、彼らが現在の役割で発揮しているパフォーマンスは大きなパズルのピースの一つにすぎなくなる。

 この盲点に対処するための方法の一つは、現在のパフォーマンスだけに焦点を当てて判断するのではなく、将来の組織のニーズに応じて成長する可能性を示すような属性を評価することだ。その指標となるのは、新しいコンピテンシーを学び、実行する意欲と能力を示す「ラーニングアジリティ」(学習機敏性)や、世界と関わり、理解しようとする幅広い意欲を示す「典型的な知的関与」などだ。

 このような特性を評価するために、自己申告の方式が開発されているが、インタビューや観察を通じて測定することもできる。たとえば、個人が最後に新たなスキルを身に付けて、新しい状況に適用することができたのはいつかや、自分の興味や趣味に時間を割く時にどれだけ夢中になっているか、などに焦点を当てるといった方法だ。

 より広範に考えれば、組織は能力開発で適切な人材に投資するため、科学的根拠のある信頼性の高い手段や、組織やビジネスの状況の理解、評価結果を解釈するのに適した専門家など、ロバスト性評価を導入する必要がある。

 これらは新しいものではないが、多くの組織において、現状では十分に実施されていないことが明らかになっている。84社を対象としたベンチマーク調査では、HiPosを特定するための評価手法を採用しているのは4社に1社程度だった。