思い込み(3) やる気のある従業員が能力開発の恩恵を最も受ける

 組織が従業員をリーダーシップ開発プログラムに参加させる場合、その最終目的は従業員のパフォーマンスが向上することだ。

 するとマネジャーは概して、トレーニングの恩恵を受ける可能性が最も高いと思われる人物を選ぶ。つまり、一般的に学習意欲が高く、リーダーになることに本質的に関心を持っており、したがって「能力開発の準備ができている」と考えられる人物だ。その結果、最も成長の「余地」がある人、つまり最も「能力開発の必要性」がある人は、その機会から除外されやすい。

 しかし、そのような人々にトレーニングの機会を与えたらどうなるのか。彼らは公式に実施されるリーダーシップのトレーニングから、どれだけのものを得られるのか。

『リーダーシップ・クォータリー』に掲載された筆者らの最近の論文では、このような疑問を探求した。筆者らは、ロイヤルカナダ航空士官候補生プログラムの参加者240人を対象に、彼らのリーダーシップ能力を高めることを主とした6週間の集中的かつ継続的なリーダーシップ開発コースを実施した。多くの企業による従業員向けのリーダーシップ開発と同様、対面式で実施され、理論と実践に基づいた手法が取られて、評価とフィードバックが提供された。

 トレーニングの期間中、参加者のリーダーの有効性、すなわち他者を率いることに対する自信の変化を追跡した。これを評価したのは、有能なリーダーになるためには個人が自分のリーダーシップ能力に自信を持つことが必要であり、リーダーの有効性がリーダーシップパフォーマンスの予測につながることが先行研究でわかっているためだ。

 その結果、最も「能力開発の必要性」が高い人、つまり一般的に学習意欲が低く、リーダーになることに本質的に関心を持たない人は、最も「能力開発の準備ができている」人に比べて、リーダーとしての自信が2倍以上も高まることがわかった。

 トレーニング終了時には、この2つのグループ間におけるリーダーシップの自信の差は35%縮まった。学習意欲やリーダーシップを発揮する意欲がないように見える人でも、実際にはリーダーシップ開発への投資から利益を得ており、絶対的に最も多くの利益を得ていたのだ。

 したがって、リーダーがこの盲点を克服する方法の一つは、従業員を一人ずつ開発プログラムに選抜することだ。すなわち、開発プログラムに、能力開発の準備ができている従業員を一人参加させたら、能力開発をこれから必要とする従業員を一人加えるのだ。それにより両者間のリーダーシップ能力の差が広がることなく、組織の不均衡が抑制される。

 この2つのグループは能力開発の目標が異なるため、具体的なプログラムは同じではないかもしれない。しかし、両者がともに能力開発を受けることで、組織はより強固なタレントプールを確保することができる。

 根本的には、リーダーシップ開発のパラドックスが起こらないようにすることが重要だ。組織の成功は少数の有能な人材だけでなく、「平均的に有能な人材」にも大きく依存しているからだ。

 地理的な制約がなく、終わる気配のない人材争奪戦が展開される中、「それ以外の人」に投資することで、強固なタレントプールを間違いなく確保し、「大退職時代」(グレート・レジグネーション)に従業員が去るリスクを避けることができる。


"Leadership Training Shouldn't Just Be for Top Performers," HBR.org, January 20, 2022.