「社内政治」のマインドセットを変える5つの方法

(1)「自分のことは自分の仕事で語る」から「自分の仕事とほかの人の仕事がどのようにつながっているかを、みずから彼らに示す」へ

 人は孤島で一人生きているわけではない。男性も女性も、自分の仕事がおのずと語るはずだと信じている人は、組織生活の相互依存性を認識できていないのだ。これは視野が狭く、機能重視の仕事観でもあり、組織という大きなパズルの中で自分が果たす役割を、ほかの人が正しく理解し評価しているという前提がある。

 この考え方は2つのグループでよく見られる。1つは、技術に精通するリーダー、すなわち高く評価される専門分野を持つ人だ。このような人は、自分が提供するものに組織がどのように依存しているのかは簡単に理解できるが、自分の仕事がほかの人の仕事にどのように依存しているのかは、それほどわかっていない。

 上下関係を重視するリーダーシップスタイルに馴染みがある人や、経営陣に追従する関係を築いている人にも、このような反応が見られる。彼らは自分のパフォーマンスを見て評価するのは自分の上司の仕事であり、みずから主張する必要があるのだろうかと考えるのだ。

 このマインドセットの転換を筆者らがサポートする際は、機能的または専門的な考え方から、自分の専門分野をビジネスのより大きなニーズと結び付けるような考え方へと変わることを重視する。言い換えれば、自分という小さな部分だけでなく、組織全体にとって何が最善かを考えるのだ。

 筆者の一人がコーチングを担当したシニアエグゼクティブの女性は、技術的な専門性が高い男性優位の分野で、ディレクターからバイスプレジデントまでスピード出世した。自分の仕事と他人の仕事を結び付ける方法を学び、社内政治を乗り切ってトップに上り詰めたのだ。

 彼女は、会話や会議、プレゼンテーションの前は必ず5分ほど時間を取り、自分が招く可能性がある反発や抵抗を予想する。聴衆について慎重に調べ、どのような人々で、彼らのニーズは何か、彼らが直面している優先的な課題は何かを考える。そして、自分の貢献と他の人々のニーズを結び付けて、自分が他のすべての人の成功にとって必要かつ固有の存在になれるようにした。

 自分の仕事を他の人々の仕事や組織の目標と慎重に結び付けることで、自分の成功と他人の成功を結び付け、自分が提供するものに価値を見出してもらえるようにしたのだ。