(3)「真正性がない」から「自分の視点を持ち、それを共有することで報酬を得ている」へ

 研究によると、真正性には2つの要件がある。意識的自覚(自分が何者であるか、自分のモチベーションは何か、現在の状況に自分が何をもたらしているかを知ること)と、表現(自分の行動と認識を意識的に合わせること)だ。要するに、自分の本当の気持ちや考え、高い志に従いつつ、状況に合わせたやり方で行動するのだ。

 真正性には洞察力と勇気、そして自己決定が必要である。自分の周囲で起きていることに反応するのではなく、自分が何者であるかをしっかり認識したうえで、周囲の人や状況と関わるのだ。

 自分が何のために戦うのかを理解していなかったり、それを主張する勇気がなかったりすると、社内政治からよりネガティブな影響を受ける。政治的であるためには、そして真正であるためには、みずからの価値観や意図を知り、自分や組織の目標に沿った方法でプロジェクトやチームを前進させなければならない。ある意味で、自分の意図を明確にして主張し、政治に反対することのほうが簡単だ。

 このマインドセットからの脱却を筆者らが手助けする際は、自分のパーパスや価値観を見極めて、それらに沿った選択ができるようサポートしている。

 筆者の一人がコーチングを担当したある女性は、自分が所属する部門のシニアリーダーのリーダーシップに失望していた。そして、新たなステップアップを目指すのではなく、会社を辞めることを考えていた。

 彼女はコーチングを通じて、自分の決断は、同僚たちの行動に反応した結果であることに気づいた。みずからが重視するリーダーシップ行動を定義してはいなかったのだ。そこでリーダーシップの視点を明確にできるように手助けしたところ、自分自身が新たな行動を実践する手本となり、文化を創造するうえでリーダーが果たす役割について、部門内で対話を始めたいと感じるようになった。

 こうして現在の仕事に対する考え方が変わり、いまの役職を続けたい、さらには昇進に挑戦したいという意欲が湧いてきた。自分が嫌だと思うことに反応するのではなく、自分の組織でこうあってほしいと思うリーダーシップのロールモデルになろうと、意識的な決断を下したのだ。