●オペレーションのデジタル化

 デジタルトランスフォーメーションにおける2つ目の重要な柱は、既存のプロセスを最適化、簡素化、合理化するためにデジタルを活用するもので、デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの初期に取り組まれることが多い。この柱におけるゴールは、人工知能や5G、IoTといったより高度な技術を含むデジタルツールを活用して、効率的にビジネスの成長を促すことだ。

 最も基本的な形として、アナログで行っていた活動をデジタルに置き換えるケースがある。しかし、今日の顧客ニーズに対応するために、システムの再構築が必要となる場合もある。

 たとえば、かつてペイパルがメールで支払いを送っていた頃には、企業コンプライアンスを遵守しているかを確認する作業にたっぷりと時間をかけられた。しかし、今日の市場で求められる即時決済を可能にするためには、組織を再編して、決済とコンプライアンスという別の部署を統合する必要があった。

 これは、単にアナログのプロセスをデジタルに置き換えるだけでなく、顧客サービスを向上させるために、組織とデジタルオペレーションを再構築することを意味する。

 オペレーションのデジタル化は、実行しなければ、より効率性の高い他社の後塵を拝することになるという意味で、デジタルトランスフォーメーションの基盤となる柱だ。デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの入り口として、まずはプロセスのデジタル化から始め、成熟度が高まった時点でプロセスを抜本的に再構築するといい。

 プロセスの再構築に伴い、企業はさらなる変革を実現する可能性を解き放つことができる。たとえば、欧州のある小売企業が顧客サービス向上のためにプラットフォームを変更したところ、eコマースプラットフォームの改良とロジスティクスのデジタル化によって、他の小売業者の製品も提供できることがわかった。おかげで、第三者の販売業者の製品・サービスから成るエコシステムを構築して、自社の顧客に提供できるようになった。

 ビジネスの仕組みを理解する必要があるため、業務のデジタル化はCFOやCOOが主導するほうがうまくいく場合が多い。時間と技術が必要とされるが、主要なKPIにより測定されるメリットとして、ビジネス上の問題を解決して顧客にサービスを提供するための時間、費用、そして人員を節約できる点が挙げられる。

 ●デジタルマーケティング

 顧客獲得やブランド認知の確立、顧客プロファイリング、あるいは単にオンライン販売のためにデジタルソリューションを探している場合は、デジタルマーケティングの柱を追求していることになる。

 この柱は、顧客と関わり、商品を販売するためのデジタルツールに焦点を当てている点で、他の3つの柱とは異なる。当然ながら、クリーンデータの取得に向けた投資や、顧客を理解するための人工知能を含むデジタルツール、オムニチャネルのプレゼンスなど、他の柱とは異なるリソースが必要となる。

 さまざまなグローバル小売企業がデジタルチャネルや人工知能、予測分析を活用して、見込み客や顧客にアクセスし、デジタル市場を立ち上げ、バイラルキャンペーンやジオターゲティングキャンペーンを仕掛けている。同様に、自社のサービスから離れそうな顧客を特定して、実際に離れてしまう前に介入するケースのように、人工知能を使って重要な顧客の行動を特定する企業もある。

 通常、このような取り組みはCMOが主導すべきだ。また、KPIでは、マーケティング投資に対する利益、顧客獲得コストの削減、新規顧客の獲得と既存顧客へのサービス向上に利用できる大量かつ貴重なデータの生成などに焦点を当てるべきだ。