(3)環境を変える
本を執筆する、昇進を果たす、人生に大きな変化をもたらすなど、長期的な目標を達成するまでのプロセスは複雑で、いくつもの段階を経る必要がある。困難に直面した時に熱意を失うことも多い。意志の力だけでやり通そうとしている場合は、特にそのような結果になりがちだ。目標をたびたび達成してきた人はたいてい、自己制御(セルフコントロール)だけに頼るのではなく、環境を変えたと語る。
実際、フロリダ州立大学の研究によると、セルフコントロールを高レベルで実践した実験参加者たちは、目標追求を妨げかねない誘惑を最小化するための措置も講じていた。このような人たちは、たしかに人並み以上の意志力を持ち合わせていたのかもしれない。しかし、彼らが成功を収めた理由は、セルフコントロールする力を活かして、集中の妨げになる要素や、目標達成のじゃまになる衝動を回避しやすい環境を選択したことにあった。
たとえば、インスタグラムを見ないように意志の力を振り絞るのではなく、スマートフォンを家に置いてきたり、アプリをブロックしたりする。誘惑をはねのけるのが最も得意な人たちは、みずからの衝動と戦うことにそれほど時間を費やしていない。環境を最適化することで、誘惑そのものを遠ざけているからだ。
目標に向かって無理をしながら突き進もうとするよりも、目標を達成しやすい環境に身を置くことを考えよう。たとえば、目標達成に関して法的拘束力のある契約を結べば、そこに向けて着実に前進することが個人的な利害と直結する。
筆者もそれを実践している。自分にとって特に重要な目標については、それを達成する法的義務を自分に課すようにしているのだ。
ポッドキャストを始めた頃、筆者は毎週新しい番組を公開することに苦労していた。週を追うごとに、番組公開の時期が遅れるようになった。そこでスポンサーを見つけて、52週間にわたり番組を支援してもらうようにした。筆者は契約上の責任を負うことになり、ポッドキャストを公開するという課題はまったく異なる意味を帯びるようになった。公開の遅れが、ぜったいに許されないことに変わったのだ。
同じように、本を執筆している時に共著者がいると、その人に対して締め切りと内容に関する責任を負うことになるので、目標を達成しやすい。途中で意欲を失うのが避けられるのだ。
キャリアで急上昇を遂げたあとに停滞期に陥ることは、けっして珍しいことではない。その原因は、あなたの意志力が欠如しているからではない。あなたに成長の能力がないというわけでも断じてない。人がキャリアプラトーに陥る根本原因は、成功について回る恐怖心であることが多いのだ。
その状況を自分の力だけで切り抜けようとするのは、やめたほうがよい。自分以外の人の力を再び借りることで、アカウンタビリティを強化し、あなたの潜在能力を最大限に解き放とう。
"3 Strategies for Holding Yourself Accountable," HBR.org, February 02, 2022.