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大退職時代(グレート・レジグネーション)を迎えたいま、従業員を惹きつけ、定着させる方法として、研修や能力開発の機会を増やすことが挙げられる。問題は、リモートワークの浸透により、以前とは状況が変化していることだ。研修や能力開発をリモートで行う場合、新しい提供形式やテクノロジーを導入する企業もあるが、まず何よりもマネジャーを巻き込むことが重要だと、筆者は指摘する。リモートのトレーニングに従業員が真剣に取り組み、そこで学んだ内容を現場に適用していくには、マネジャーの積極的な関与が欠かせない。本稿では、そのために必要な5つのステップを紹介する。


 大退職時代(グレート・レジグネーション)の到来に伴うコストが増大し続ける中、企業は従業員を惹きつけ、定着させる方法をますます必要としている。その方法の一つとして確実なのは、研修や能力開発の機会を増やすことだ。2019年のリンクトインの調査では、「能力開発に投資してくれるのであれば、現在の会社に留まる」と、従業員の94%が回答している。

 とはいえ、リモートワークが浸透したことで事態は複雑になっている。『トレーニング・マガジン』誌の年次報告書「トレーニング・インダストリー・レポート2021」では、最大の課題として「従業員をリモート研修に真剣に取り組ませること」が挙げられている。                                        

 一部の企業は、優れたテクノロジーを活用することで、この問題の解決を試みている。コホート(共通の属性を持つ集団)ベースのコースといった新たな提供フォーマットや、バーチャルリアリティのようなテクノロジーは、リモート研修の効果を大幅に向上させるだろう。

 しかし、もっと身近に、別の解決策があるかもしれない。すなわち、マネジャーを巻き込むことである。

 最近のギャラップの調査では、「チームのエンゲージメントレベルのばらつきは、その少なくとも70%以上がマネジャーやチームリーダーの質によって説明できる」ことが示されている。この解決策は往々にして、見落とされているようだ。マネジャーの大半は、自社の研修と人材開発(Learning and Development: L&D)の効果に懐疑的な見方をしているのだ。

 企業は、この点を是正しなければならない。マネジャーが従業員の研修や能力開発にもっと積極的な役割を担うための、シンプルだが効果的な5つのステップを以下に挙げていく。