●マネジャーからフィードバックを集める
研修イニシアチブのほとんどは、参加者からのフィードバックしか集めていない。それだけでなく、企業は、参加者のマネジャーからもフィードバックを集めなくてはならない。
ただし、フィードバックを収集するタイミングは分けて考えたほうがよい。トレーニングセッションの直後ではなく、まずはトレーニングの直前に、マネジャーに何を期待しているか話を聞いたうえで、トレーニング終了後30日から60日後に、具体的なフィードバックの場を設定するのがよいだろう。
その際の質問も、参加者本人とは別の内容になるはずだ。トレーニングの質ではなく、トレーニングの効果について尋ねるのだ。チームメンバーは学習したことをどのように適用すべきか、実際にどのように適用したのか、効果的な適用を妨げている要因は何か、などである。
製薬・バイオテクノロジーのグローバル企業アストラゼネカは、従業員の能力開発と定着に向けた戦略で、このアプローチを採用している(同社は1999年、英国のゼネカとスウェーデンのアストラが合併して誕生した)。
たとえば、同社の「リーダー・アズ・コーチ」は、6カ月で能力開発の実地体験をするプログラムで、参加者は自分のマネジャーからだけでなく、自分が管理する従業員からも評価を受ける。評価はプログラムの開始前、期間中、終了後に実施され、どの程度「チームが達成したことを認識し、称賛しているか」「従業員の潜在能力を最大限に引き出す環境を構築しているか」など、20種類の評価基準が設定されている。
「これは『実務に適用する』アプローチを採用した体験重視のプログラムですから、実際の現場でどのような効果を発揮するかを評価したいと考えています」と、同社のラーニング・アンド・エンタープライズ・ケイパビリティ担当グローバル責任者のブライアン・マーフィは言う。「マネジャーからのフィードバックを通じて、学習者とL&Dチームは、実際の効果と進歩を把握することができるのです」
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企業は労働市場の著しい変化と苦闘しているが、従業員の定着と能力開発を行うという重責は、HR部門やL&Dチームだけが負うべきものではない。マネジャーは、従業員の定着を促し、エンゲージメントを高めることができる絶好の立ち位置にいる。マネジャーが実際に行動に移せるよう、企業は仕組みとツールを用意すべきである。
【編注】
ハーバード・ビジネス・パブリッシングとエメリタスは、コンテンツの作成・配信においてパートナーシップを締結している。本稿の著者と編集担当者はいずれも、このパートナーシップに関与していない。
"Effective Employee Development Starts with Managers," HBR.org, March 01, 2022.