●「他人の力になりたいという欲求があり、コラボレーションを依頼されやすい」

 他人を助けることは、言うまでもなく建設的な行為だ。目的意識を与えてくれ、誰かの役に立ちたいという欲求を満たすことができる。自身のアイデンティティの強化にもつながる。しかし、自分に助けを求めてくる人たちの能力を伸ばすことをせずに、即時に、あるいは頻繁に問題を解決してあげることが続くと、あなたは頼みごとをされやすい人間になってしまう。

 覚えておくべきは、ある物事を「イエス」と引き受ければ、プロフェッショナルとしてか、個人的かを問わず、別の重要な活動を「ノー」と断ることになるのだ。物事の優先順位を明確にし、遠慮せずに「ノー」と言うようにしよう。

 また、他人を助ける時、あなたがその人の代わりに問題を解決するのは避けるべきだ。そうではなく適切な人物と引き合わせたり、有益な情報やリソースを紹介したり、最適な解決法を教えたりしよう。そうすることで、次回以降は安易に助けを求められるようなことがなくなる。また、その相手を助けたことにもなるのだ。

 ●「物事を成し遂げて充実感を味わいたいという思いからコラボレーションを行い、過剰な負担を抱えてしまう」

 物事を成し遂げると満足感を得られるが、それが病みつきになることがある。その結果、自分にとって本当に必要な活動や最も大きな価値を生み出せる活動に対して、エネルギーを集中的に注ぎ込めなくなるかもしれない。

 達成感を得るためだけに行動することは避けよう。私たちはそのような行動を日常的に、無意識に取っていることが多い。たとえば、すべてのメールに返信しようと苦闘するあまり、頭を使う仕事に時間を割けないことがある。極端な例としては、課題を完了させた時に線を引いて消去する快感を味わうために、やることリストを作成していると打ち明ける人もいた。

 コラボレーションを求められた時は、問題解決に向けて取るべき行動を指示するだけに留めて、相手の能力を開発するよう心掛けよう。小さなタスクを代わりにやる必要がある時は、完遂するところまでは求められていないと肝に銘じるべきだ。

 ●「影響力を持ちたい、専門家として評価されたいという欲求があり、必要以上に頼られる」

 他人に影響を及ぼしたい、他人から評価されたいという欲求は、コラボレーションの要請を過度に引き寄せかねない。専門家として行動するのは、それ自体が落とし穴である。あなたが自分の力で問題を解決してしまうと、他人の能力開発の妨げになる恐れがあるのだ。

 自分が専門家としての地位を確立してきた分野で、これからも評価してもらいたいと思うのをやめよう。会議での発言やメールでのやり取りする際は、細心の注意を払うことが重要だ。あなたが専門家として振る舞うことで、いかなるアイデアを実行に移す際も、あなたに判断を委ねたり、あなたの意見を求めなくてはならないと思ったりするようになる。

 また、あなた自身、すべての状況を完全に理解しているわけではないだろう。最終的に、有益とはいえないアドバイスを送る可能性もある。

 ●「低評価を受けたくないと考えて、コラボレーションに過剰に応じてしまう」

 否定的な評価を受けることに不安を感じていると、頼まれごとに「ノー」と言うのはほぼ不可能だ。上司からの要求だけでなく、同輩からの要求を拒むことも難しい。もし「ノー」と言えば、目に見えない形で悪影響を被るのではないかと恐れるためだ。

 頼まれた通りに行動するか、「ノー」と言うかの二者択一ではない。「どのような順序で仕事を処理してほしいのですか」と問い返して、相手に選ばせることもできる。また、自分の能力と余力、現状で抱えている仕事の量をはっきり伝えたうえで、本当に満たすべきニーズは何かを話し合い、依頼を達成するために別の解決策はないかを考えよう。

 ●「間違いを指摘されたくないために、コラボレーションの準備や実践に時間を費やしすぎる」

 自分は有能だというイメージを傷付けたくないなど、間違いを指摘されたくない理由はさまざまだろう。いずれにせよ間違いたくないという思いが強いと、非生産的な行動を取りやすい。会議の準備に時間を費やしすぎたり、完璧な文面のメールを送ろうとしたり、あらゆる人に余計な仕事を生み出したりする。

 そこに時間と労力を費やすよりも、自分は正確な答えを把握していないと正直に打ち明けたうえで、その答えをすぐに見つけ出す能力と意思があると伝えたほうがよい。自分の限界を率直に認めて、質問する勇気を発揮できれば、みずからの非生産的な行動を減らせるだけではなく、周囲の人たちが自分の限界を率直に認めやすい環境をつくることもできるのだ。