(1)実質コストが数字に反映されていない

 経済は自然界からのインプットに完全に依存している。手をかけて育てたり掘り起こしたりするものだけでなく、空を汚染物質の「無料のゴミ捨て場」としているように測定できない恩恵もある。炭素を1トン排出するたびに気温がわずかに上昇し、空気の質が低下するが、企業がその社会的コスト(「外部性」とも呼ばれる)を負担することはない。

 企業は、自然が提供する数十兆ドル相当の価値やサービスを、何も支払わずに享受している。しかも、化石燃料を燃焼し続けたり、目の前の収穫を最大化させるために土壌を劣化させて将来の収穫を犠牲にしたりするなど、持続可能性の低い経済活動のコストを政府の補助金や規制が軽減している状態だ。

 解決策:値段がついていないものに値段をつける

 多くの優良企業は、事業活動に伴う炭素に「シャドウプライス」(潜在価格)をつけることで、外部性を内部化している(自主課税として実際に徴収する例もある)。炭素をはじめとするインプットの価格を上げることが、資本や投資に関する意思決定を変えるのだ。

 ただし、それだけではけっして十分と言えない。このような取り組みを行なっているリーダーが先頭に立ち、炭素に拘束力のある市場価格をつけるよう提唱しなければならない。

 そのための体系的かつ先進的なロビー活動を、筆者らは「ネットポジティブ・アドボカシー」と呼んでいる。同業者やNGO、政府と協力することで、システム全体を改善する政策を打ち立て、実行に移すのだ。

 同様の理論は、炭素だけでなく、最低限の生活賃金や不平等を是正するための社会インフラへの支出増加といった、社会問題の支援にも当てはまる。このような価格シグナルと支出の優先順位を適切に理解すれば、持続可能なプロダクトの製造と投資が、はるかに優れた選択肢になるだろう。

(2)自分自身のバイアスに囚われる

 持続可能な選択が従来の方法より利益を生むとしても、実際にそれを選択するとは限らない。直線的で非体系的な視点で考えたり、やりやすい方法や目の前の物事を優先したりするなど、我々の意思決定には常にバイアスが働く。

 CEOであれ、CFOであれ、投資銀行家であれ、誰もがバイアスと無縁ではいられない。「自分は化石燃料に投資して儲ける方法を知っているから、それを続ける」と心に決めている投資家もいるかもしれない。クリーンテックの経済性を考えれば賢明とは言えないかもしれないが、人間は単なるエコノミックアニマルではない。

 解決策:意思決定を行うグループを多様化する

 我々は自分が知っていることに固執しがちで、集団思考や慣性に流されやすいことを考慮すると、組織やリーダーに対して異なる視点を提供する必要がある。

 たとえば、市民社会を意思決定に参加させる。批判的な立場のNGOに依頼して、教育や問題解決に協力してもらうこともできるだろう(ただし、あなたを単に陥れたいだけの皮肉屋は避ける)。

 さらに、若い世代を招き入れて、古い考え方を一掃する。新しい従業員は会社に対して、人々を成長させ、地球環境を改善し、かつ利益をもたらす解決策を見出すよう期待している。

 また若い世代は、会社に長期的視点をもたらす。今後半世紀にわたる気候変動に関して言えば、20代の若者は必然的に70代や80代のリーダーと比べてはるかに関心が高い。20代の人たちと話をして、彼らの声に耳を傾けよう。