●感謝のエコシステムを構築し、率先して模範を示す

 組織に感謝の文化を育みたいと考えるリーダーは、究極的には、採用活動やオンボーディング、業績評価などを行う正式な場だけでなく、非公式な場で従業員と遭遇した時も率先して感謝を示し、その態度を規範にすべきだ。

 感謝の文化を持続するカギは、感謝の実践を従業員の日常業務に埋め込み(従業員表彰プラットフォームを利用できるだろう)、マネジャーやCEOが変わっても感謝の規範を継続させることだ。結局のところ、リーダーだからといって、キャンベル・スープ・カンパニーの元CEOダグラス・コナントのように、従業員に3万通以上の感謝の手紙を書くなどということは、誰にでもできるわけではない。

 これまで数多くの企業が、感謝のエコシステムを構築する取り組みを行ってきた。

 たとえば、グリッチでは全社会議の時、さまざまなチームやプロジェクトに関わる従業員が、社内の誰かに対して感謝の気持ちを示す時間を設けている(同社では「キウィ・ブラボー」と呼ばれている)。感謝する相手は、難しい技術課題の解決に貢献した人から、顧客のために職務を超えた働きをした個人やプロジェクトチームまで、さまざまだ。

 ザッポスでは、同僚が称賛に値する行動を取ったのを見た時に、「ゾラー」と呼ばれる社内通貨を贈ることが奨励されている。ゾラーは「ゾラーストア」と呼ばれる売店で、さまざまなアイテムと交換することができる。さらに、同社の従業員は月に1回、同僚の優れた貢献に対して50ドルのボーナスを支給することができる。

 カリフォルニア大学バークレー校では、「IT感謝プログラム」の一環として、感謝のカードと25ドルのギフトカードを受け取るITスタッフの候補を、職員がノミネートする。理想としては、感謝の習慣は、何らかの形で組織にすでに存在している規範や価値観と一致するように導入するのがよいだろう。

 ●特権意識を抑えて、パースペクティブテイキングを実践する

 筆者らの研究では、リーダーが他者の貢献に感謝する方法の一つとして、相手の視点で物事を考える「パースペクティブテイキング」が有効だと示されている。

 パースペクティブテイキングは、特権意識と逆相関の関係にあり、相手との距離を縮めることがわかっている。さらに、パースペクティブテイキングは、職場における感謝の表現と直接関係していることも、研究で明らかになっている

 他者への共感とパースペクティブテイキングの能力を高めるには、若手従業員、とりわけ多様なバックグラウンドを持つ従業員のメンターになることを検討しよう。加えて、仮想現実(VR)を取り入れた研修プログラムも、パースペクティブテイキングの能力を高め感謝を促すうえで役立つだろう。

 たとえば、テイルスピンのプラットフォーム「コパイロット・デザイナー」は、ダイナミックな対話形式の学習コンテンツを提供し、マネジャーが日常業務で見落としがちな感謝すべき場面をシナリオに盛り込むようカスタマイズできる。