自分もしくは同僚が過小評価されていると感じた時に感謝を示すべき理由

 ●予期せぬ感謝の表現を通じて、つながりを再構築する

 感謝の利益を享受するために、上司から「ありがとう」と言われるのを待つ必要はない。実際には、長い間、自分が感謝の気持ちを伝えそびれていた相手との関係を再構築することも、驚くほど大きなインパクトをもたらしうる。

 だからこそ、昔の上司や同僚、恩師などに礼状を書くことをお勧めしたい。メンターをはじめ、仕事で有意義な関係を築いている、もしくは過去に築いていた相手にお礼を伝えよう。それをすることで、相手の意識があなたに向けられるようになるだけでなく、「休眠状態」だった絆を再活性化することで、優れたネットワーク構築につながることが研究で示されている。

 たとえば、ある研究では200人のエグゼクティブに依頼し、過去3年以上連絡を取っていない仕事関係の知り合いに、現在の仕事で抱えている悩みに対する助言を求めてもらった。そのうえで、過去の人脈から得た助言と現在の人脈の2人から得た助言について、それぞれどれだけ斬新で役に立ったか点数をつけてもらった。すると興味深いことに、現在の人脈よりも休眠状態の人脈から得た助言のほうが、斬新で価値が高いという評価が下された。

 ●権限の小さな従業員による貢献を公の場で示す

 地位の低い従業員は、自分自身の貢献を認めてもらうことを躊躇するかもしれない。これは問題だ。なぜなら、彼らの貢献は意図せず見過ごされることが少なくないからだ。もっとひどい時には、上司が悪意を持って自分の手柄にしてしまうこともある。

 地位の低い従業員の貢献を公にすることで、地位の高い従業員にそれを「突きつける」ことができ、地位の低い従業員が正当な評価を受ける助けになるだろう。

 また、同僚の貢献を公の場で認めることで、その同僚の地位を高めると同時に、自分自身の地位も高められることを示した研究もある。他者を評価することにとりわけ消極的で、自己中心的な上司の下で働いているならば、地位の低い従業員の貢献を、上司の貢献も認める形で指摘してみてはどうだろう。

 たとえば、チームミーティングの席で、「リンの優れたリーダーシップのおかげで、マイケルはこのように素晴らしい成功を収めた」と発言する。感謝を表現する際、職階が異なる人たちの功績を含めると、地位の高い人の自尊心を満足させつつ、地位の低い人の承認欲求を満たすこともできる。

 リーダーへ向けた筆者らの究極的なメッセージは、「あなたが従業員や同僚の倫理観の高さや、プロジェクトに対する具体的な貢献にどれだけ感謝していても、本人がその気持ちに気づいていると思い込んではいけない」ということだ。感謝の気持ちは、表現しなければ伝わらない。

 あなたが心からの感謝の気持ちを示し、その感情が組織全体に伝わることで、誰もが利益を得られるのだ。


"Research: More Powerful People Express Less Gratitude," HBR.org, April 25, 2022.