有色人種の女性は「もうたくさん」と言っている
筆者のプルショサマンが、自身の最新著を執筆するためにインタビューしたマリア(仮名)は、シニアリーダーとして10年間働いた。
社内の上級職で唯一、有色人種の女性だった彼女は、会社のポートフォリオの中でも最重要顧客の担当を経営陣から任され、同じ職位のアカウントエグゼクティブであるフランク(仮名)とペアを組むことになった。フランクは白人で、彼女より10歳上だった。
最初から雲行きが怪しかった。数週間もしないうちに、フランクはガキ大将タイプだとわかってきた。スタッフを怒鳴りつけ、有色人種を見下すような発言をし、マリアを自分と対等ではなく部下であるかのように扱った。
マリアが自分と一緒に働けるのは「ラッキー」だ、自分は報酬審議会のメンバーなので彼女の昇進も給料も決める権限がある、とも言った。実際、フランクは自分が社内政治に通じていることや、誰よりもうまく立ち回っていることについて、たびたび口にした。
マリアが他の上級職の女性に相談したところ、フランクは過去、女性に対して規則違反を犯し、HR部門やリーダー陣は彼の振る舞いを承知していると教えられた。マリアは、なぜ誰もが見て見ぬふりをするのか理解できず、周囲からの助言にもショックを受けた。フランクのことはできるだけ無視して、彼女自身が結果を出し続ければよいと言われたのだ。
マリアは1年以上フランクの振る舞いを我慢したが、ついに正式な紛争解決プロセスを通じて、彼の言動を通報しなければならないと思い至った。キャリアを棒に振る「自殺行為」だと言われたが、自分のためだけでなく、彼女の周りにいる他の女性や多様な才能のためでもあった。苦渋の決断であり、彼女自身の精神的・肉体的なウェルビーイングを損なう行為でもあった。
通報後は、予想通りの展開になった。HR部門が積極的にフランクを叱責することはなく、マリアはその影響を痛感させられた。それまでは高い評価を得ていた、彼女の業績評価が下がったのだ。周囲と「うまくやっていくことを学ぶ必要がある」とも言われた。
まるで、彼女が会社の問題児になったかのようだった。人々はフランクがそういう人物であることを受け入れ、彼と距離を置くようになった。
マリアにとって、フランクのようなガキ大将を許容する会社で働くことはできないことも、このままでは自分が成功できないことも明らかだった。有害な行為を許さず、もちろん報いることなどない文化の会社を探し、彼女が新しい仕事を見つけるまでに、それほど時間はかからなかった。