企業はなぜ、有害なロックスターを容認するのか

 筆者らは、企業リーダーが多様な人材、特に有色人種の女性が働き続けたいと思うような、インクルージョン(包摂)とビロンギング(帰属意識)に基づいた、高いパフォーマンスを上げる文化を醸成できるよう支援している。有害なロックスターへの対処は、ほぼすべてのクライアントが直面している課題である。

 あるクライアント企業では、営業部門の離職率が48%と高かった。その理由は、営業部門のトップが、数字は達成しているが、新しいCEOが確立しようとしている企業文化を破壊するような人物だったからだ。人のいいCEOは、次のように説明した。「彼に問題があることはわかっているが、株主の期待に応えるような成果を出してくれる。達成すべき収益目標があるのに、彼を解雇することはできない」

 短期的利益が金融機関や投資家に評価される環境では、CEOは矛盾する要求を突きつけられることが少なくない。たしかに、有害なロックスターは目の前の数字を達成する。しかし、文化を脅かすガキ大将が、離職や従業員エンゲージメント、生産性、雇用主のブランディングに与える長期的影響は無視できない。

 有害なロックスターが容認される要因の一つは、昔ながらの「ボーイズクラブ」精神だ。多様な人材を犠牲にして有害なロックスターが守られ、会社の評判や利益を犠牲にして有害な文化が強化されるのだ。

 しかし、いまの時代、リーダーはリーダーとしてのあり方を変えることが求められている。リーダーが時代に適応しない、あるいは時代に適応できなければ、自身のキャリアと会社の成功を危険にさらすことになる。