チームには、まだ価値があるか

 マネジャーは、チーム構造の再現を急いだり、チームを支援する技術に投資したりする前に、コストよりも利益が上回っているかどうか、いま一度考えてみてほしい。残念なことに、ハイブリッドワークは、そのバランスを間違った方向に向かわせる可能性がある。

 ●コストの増加

 チームは常に、調整作業に多大な時間とエネルギーを割き、注意を払わなければならない。たとえば、情報・リソース・仕事内容の伝達と指示、健全な規範の確立と対立の解決、モチベーションと実務の調整、個々で異なるパーソナリティの融合、共同作業による成果物の提供などだ。

 また、チームをグローバルに展開している場合は、時差や文化、言語の違いが、サブグループ間で混乱が起きたり、誤解が生じたりする原因になる。このような理由から、コラボレーションの過負荷は以前からリスクであった。

 ハイブリッドワークの普及により、その複雑性がさらに増している。上記のようなコストが依然として存在することをわかっていながら、チームメンバーはよりいっそう分散して働くようになった。ある時はオフィス、またある時はリモートと、さまざまな場所で働き、それぞれリソースも気を散らすものも異なる。

 忘れてはならないのは、リーダーはチームメンバーについて、それぞれの存在を切り離して考えるべきではないことだ。なぜなら、個々のメンバーがどこで仕事をしているかはチーム全体の構成に作用し、地理的に分散して働くチームが新たなサブグループ、マジョリティ、マイノリティ、孤立者を生み出すことで、大きな影響を及ぼすからだ。

 働く場所の調整だけでも相当複雑であるのに加え、従業員はオフィスで働く際の自律性を、ますます求めるようになっている。日々変化するスケジュールも、自身の手で調整しようとしている。

 さらに、このようなパターンさえも常に変化している。2022年のグローバル調査では、従業員の半数以上が、将来的にハイブリッドの度合いを高めたいと考えていることが明らかになった。ここまでに挙げたすべての要因により、チームが行うべき調整作業の複雑性が大幅に増し、そのための時間、労力、エネルギーのコストを増加させる。

 ハイブリッド型のチームワークが生み出すこれほどの相違は、従来の組織活動では一度も見られず、多くのマネジャーが極限に達している。同じ調査では、グローバルマネジャーの74%が、ハイブリッドチームを上手に機能させるために必要なリソースや影響力を、現時点で持ち合わせていないと回答している。

 ●利益の減少

 現代のチームは、調整コストが上昇していることに加え、利益が減少している。調査によれば、パンデミックが始まって以来、クリエイティブワーク、ビジョニング、意思決定の成果という点で、チームのコラボレーションが特に損なわれているという。

 リモートチームやハイブリッドチームはまた、社会的つながりや帰属意識の欠如に見舞われている。筆者らの調査では、グローバルエグゼクティブは平均3つのチームに所属しているにもかかわらず、つながりがかつてなく希薄になったと感じていることがわかった。

 実際、チームに所属していると「コントラスト効果」が働くため、人々はより孤独を感じる。同僚と強いつながりが持てると期待しながら、実際にはそうならなかった場合、従業員は失望と孤独をより強く感じることが少なくない。