●勇気ある会話の模範を示す
あなた自身が人種差別、特権、抑圧といったテーマを語ることに慣れてくれば、周囲もそれに気づき、同じような行動を取るようになる。嘘偽りなく、どのような問題に直面しているかについて話したとしても、自分の立場が悪くなることなく、むしろ好ましい結果につながると思える組織文化がなくては、新しいアイデアを安心して提案したり、本当の意味でチームビルディングを行ったりすることはできない。
筆者は毎週、チームメンバーにメッセージを送っているが、そこでは1週間の仕事と私生活を振り返り、自分が犯した失敗についても常に包み隠さず伝えている。それにより、失敗しても問題ないことをみずから示しているのだ。
●友人や同僚の力を借りる
難しい会話をしたり、相手と合意に至ったりするのが難しい時、筆者は友人や同僚の力を借りることにしている。DEIの専門家や他の幅広い分野の人々に知恵を借り、導いてもらうのだ。
また、自分が言おうとしている内容、もしくは取ろうとしている行動が「正しい」ものかどうか確信を持てない場合は、あらかじめ幅広い層の人々に精査してもらうのがよい。あるいはチームメンバーに対して、特定の回答を引き出そうとせずに、「何」と「どのように」について尋ねるのもよいだろう。そうすることで、相手の意見を聞く際の手本を示すのだ。
たとえば、「あなたがあのように述べた意図は何ですか」「相手はあなたの行動を、どのように解釈すると思いますか」「もっと話を聞かせてください」と尋ねてみよう。
●失敗しても、行動し続ける
失敗したり、失言をしたり、適切な行動を取れなかったりすることに対して、強い恐怖心を抱くのは無理もない。重要なのは、早い段階で失敗し、素早く立ち直ることだ。
失敗しない人などいない。重要なのは、失敗することよりも、失敗した時にどのような対応を取るかだ。不適切な言動で誰かを傷つけてしまった後も、真の思いやりと気遣いを示すための努力を続ければ、相手との共通理解を深めて、ともに前に進むことができるだろう。
最も重要なのは、失敗を恐れるあまり、何も行動しないという事態を避けることだ。たしかに、一つの失敗を認めると、自分では気づいていなかった他の言動にも、批判の目が向けられることはある。誰かを傷つけることがないように、沈黙していたいという誘惑に屈しそうにもなる。しかし、そのような態度を取ってはならない。
当然のことながら、筆者は言うべきことと言うべきでないことについて、また、できるだけ多くの声を反映させるためにはどうすべきかについて、常に考えている。時には、従業員が懸念や不安を話してくれた後、その人物にメッセージを送ることもある。どのような言動が、自社のミッション、価値観、行動原則に最も合致しているかを、常に考えている。
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インクルーシブな文化を構築し、それを維持していく過程で、障害にぶつかったり、失敗したりすることは避けて通れない。不適切な言動を取ってしまった時は責任を認め、インクルージョンの実現に向けた取り組みを粘り強く続けることが重要だ。
"When Your Efforts to Be Inclusive Misfire," HBR.org, May 03, 2022.