この時の筆者のように、気まずく、居心地の悪い経験をすると、自分の責任を否定したり、自己弁護に走ったり、もっとひどい場合は沈黙してしまったりする人があまりに多い。研究によれば、人々が沈黙する主な理由の一つは、自分が罰せられたり、拒絶されたりすることに対する恐怖心であることがわかっている。

 従業員は失言を恐れるあまり、職場での人種差別や性差別的なマイクロアグレッション(偶然や無意識からくる差別的言動)、あるいは暴力的な発言に対して声を上げようとしなくなる。この傾向は、マネジャーにも当てはまる。DEIの取り組みがなかなか前進しない大きな理由が、ここにある。

 重要なのは、難しい会話を避けようとせず、相手が言葉使いを誤っても許容することだ。何も言わずに沈黙しているよりは、言葉を発して気遣いを示すほうが好ましい。

 では、勇気を奮って声を上げた結果、筆者のように失敗してしまった場合、どうすればよいのか。失敗をポジティブな学びの機会に変えるには、どのような行動を取るべきか、筆者の助言を以下に紹介したい。

 ●自分の責任を認める

 ジェンダーに関してインクルーシブでない表現を使ってしまったり、白人が困っている時にしか声を上げなかったと批判されたりなど、さまざまな状況があるだろう。自分が置かれた状況次第では、すぐに問題を解決しようとしたり、釈明して幕引きをしようとしたりすることは、やめたほうがよい。

 自分の言葉によって生じた緊張状態から逃げてはならない。厳しい指摘にも耳を傾け、それと向き合う。自分の言動や言動の欠如について、きちんと責任を認めなくてはならない。みずからの責任を認め、謝罪し、今後はより適切な行動を取ると約束すべきだ。

 謝罪しても相手の心の傷を癒せない場合があり、すぐに許してもらえるとは限らない。しかし、許しを得ることよりも重要なのは、対話を始め、自分の失敗から学ぼうとする姿勢を示すことだ。

 ●対話を行い、失敗から学び、謙虚に振る舞う機会をつくる

 自分がどのような失敗を犯したか理解するためには、純粋な好奇心を示すことが欠かせない。たとえば、自身の言葉の選択について相手に尋ねてみる。これを機に、他の文化や異なる視点への理解を深めよう。

 マネジャーであれば、さまざまなDEI関連のトピックについて対話する機会を、定期的に設定すべきだ。そうすることで、感情を表現することを受け入れ、敬意を払い、誰かが不適切な発言をした時、互いに手を差し伸べ合おうという雰囲気が醸成される。

 賛否が大きく分かれる話題を避けてはいけない。従業員が質問を受けつけるアスク・ミー・エニシング(AMA)や、短時間のプレゼンテーションを行うライトニングトーク(LT)の場を用意して、従業員が自分の経験や問題解決策を語る機会を設けるのもよいだろう。