マイクロアグレッションへの対応
マイクロアグレッションに対する意識が高まるほど、当然ながら、実際に起きている問題に気づきやすくなる。そこでは、自分が介入すべきかどうか、介入する場合はどのような方法で介入すべきか、という疑問が生じる。
マイクロアグレッションの被害者への助言と同じように、あなたにも「ただちに対応する」「後で対応する」「放っておく」という選択肢がある。
唯一の正しい対処法があるわけではないが、ここではマイクロアグレッションを目撃した際に、考慮すべき点をいくつか挙げよう。
(1)問題を指摘するのに適したタイミング
状況を検討し、安全に対話ができる場をどう設定するか、慎重に考える。その場ですぐに話すほうがよいか(他の人たちが近くにいる可能性が高い)、1対1のほうがよいかを検討しよう。
状況によっては、その場ですぐに指摘するだけで十分な場合もある。
たとえば、会議中に誰かが同僚の性別をうっかり間違えてしまった場合、リーダーは「全員の代名詞を正しく使うようにしよう」と伝え、会議を続行させればよい。そうすることで、マイクロアグレッションを指摘する行為がタブー視されなくなり、マイクロアグレッションが起きた時に、その場でポジティブに修正する文化を構築できる。
とはいえ、人前でミスを指摘されるのが好きな人はいないし、マイクロアグレッションを指摘された同僚が責められているように感じると緊迫感が高まるものだ。
そのため、相手と向き合う必要のある場合は、クライアントや他の同僚がいない場所で、率直に本音で対話できる安全な環境を用意し、相手をそこに呼び入れて、「そんなつもりがなかったことはわかっているが、〇〇という言い方はやめておこう」と伝える。
(2)問題の発言をした人物とあなたの関係性
マイクロアグレッションを犯した人物とあなたの間に、個人的な関係を築けているか。個人的な関係があるならば、単に「さっきの発言がちょっと気になったのだけど」と言うことができるかもしれない。
一方で、その同僚との関係性が構築されていない場合は、相手の性格(好戦的な傾向があるか)や過去の居心地の悪い会話(親しみやすいタイプか否か)について、これまでに把握していることを考慮に入れる。また、その人物が親しくしている他の同僚の協力を仰ぐのも一つの手だ。
(3)マイクロアグレッションに関するあなた自身の認識度
目の前の問題について、自分がどの程度精通しているか率直に考える。たとえば、ある発言が人種的マイクロアグレッションだと気づいても、その表現の歴史的経緯や意味合いを完全には理解できていないかもしれない。
その場合、相手と話をするのはかまわないが、自分がその道の権威ではないと自覚し、まず自分自身が勉強することだ。そのトピックに関して詳しい人物に相談することを検討するのもよいだろう。
マイクロアグレッションに気づき、行動を起こすと決めた時に重要なのは、友人や同僚に「意図」と「影響」の違いを理解しているか確認することだ。相手を攻撃する意図がないとしても、発言するからには、自分の言葉の影響力を認識する必要がある。どのような意図であっても、実際の影響を帳消しにはできないし、言い訳にもならない。
たとえば、「あなたの発言の意図が○○であったであろうことは理解しているが、私自身は××であると受け取った」という伝え方ができる。意図と影響のギャップに目を向けさせるだけで、相手に学びの機会をもたらすことができる場合もある。