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経済学者の属性に人種やジェンダーの偏りが存在することはよく知られているが、この学問分野が抱えるもう一つの問題がある。その問題とは、社会経済的なバックグラウンドの多様性が低いことだ。経済学者の研究内容や意思決定は社会全体に影響を与えるため、社会的にも経済的にも恵まれた家庭で生まれ育った人以外の視点を取り入れることが極めて重要だ。本稿では、経済学の社会経済的ダイバーシティが低い理由を明らかにしたうえで、この問題を解決に導く方法を提示する。


 経済学という学問分野に人種とジェンダーの問題が存在することは、よく知られる。米財務長官(前FRB〈米連邦準備制度理事会〉議長)のジャネット・イエレン、現FRB議長ジェローム・パウエル、元FRB議長ベン・バーナンキをはじめ、多くの重鎮たちが改革を提唱している。

 経済学はまた、これまでほとんど見過ごされてきた、別のダイバーシティの問題も抱えている。社会経済的なバックグラウンドにまつわる問題だ。筆者らの新たな研究で、経済学は米国のあらゆる学問分野の中で、社会経済的ダイバーシティが最も低いことが明らかになった。

 この点は、いかなる学問分野においても問題視されるべきだが、経済学では特に深刻である。学界や政府の経済学者は、極めて多岐にわたる事項について、政策や国民的議論に影響を与えている。格差、失業、インフレーション、教育と医療へのアクセス、福祉制度、貧困などはその一部にすぎないが、これらの多くは特に所得分布の高所得階級でない人々に甚大な影響を及ぼす。

 その人物が育った環境が、経済問題の文脈知識、探求したい疑問の選び方、そして価値観に影響を及ぼしうることは知られている。では、社会経済的に恵まれないバックグラウンドを持つ経済学者が多いといえない状況により、どのような視点、疑問、答えが失われているのだろうか。

 たとえば、最低賃金について考えてみよう。経済学者なら誰でも、この問題を定量的に分析して、最低賃金が労働者の収入と消費に対して物質的にどのような影響を与えるか検証し、最低賃金の引き上げがどの程度失業を生じさせうるのか予測することはできる。

 ただし、最低賃金で毎週働く、最低賃金でやりくりする、あるいは仕事自体を見つけることができない――このような経験を実際にしていなければ、質の高い雇用や生活を維持できる最低賃金に関する政策を立案する際、その意味合いを十分に理解することは困難を極めるだろう。

 もう一つの例として、大学進学について考えみよう。両親がともに大卒か大学院の学位を持つ人には、第一世代大学生(家族で初めての大学進学者)が大学についてどのような情報を持っているか、教育上の意思決定をどのように行っているか、彼らがいかなる障壁に直面しているか、という事情を完全に理解することが難しい。学費や学生ローン免除制度に関する決定の影響を理解することは、それ以上に難しいだろう。