経済学専攻のダイバーシティを促進する
では、この問題をどうすれば解決できるのか。最初に強調すべき重要な点は、その大部分は経済学に限らず学界全体の問題だということだ。あらゆる学問分野は、大学と博士課程の両方で(後者では特に)、一般人口に比べると社会経済的ダイバーシティがはるかに低い。
この問題は、学界全体による体系的な解決を要する。たとえば、質の高い教育にアクセスするコストを減らす、教育の選択肢と教育への投資効果について入手可能な情報を増やす、社会経済的に恵まれない学生に対し、大学や大学院の在学期間を通してサポート、メンターシップ、インクルージョンを強化する、といった介入措置が含まれる。
ただし、経済学に特有だと思われる点もいくつかある。筆者らの研究で、経済学とその他の学問の博士号を隔てる社会経済的な格差の大部分は、学部課程の段階で現われていた。経済学を専攻する第一世代大学生の割合が、他の科目に比べると低いのだ。
これは、経済学という科目に触れる機会の不足が理由かもしれない。全米の州の半数で、経済学は高校卒業の必修科目とされていない。そして経済学は通常、公立大学よりも私立大学のほうが、格段に大規模かつ人気のある専攻科目だ。
もう一つ考えられる要因は、学部課程における初級の経済学の講義内容だ。生産関数や無差別曲線に重点を置き、格差よりも集計的な成果に焦点を当てる初級経済学は往々にして、あまりに定型化された、非現実的なものだと感じられる。恵まれないバックグラウンドを持つ学生にとって特に重要と思われる問題と、どこか乖離しているように感じられやすいのだ。
経済学者が実際に研究するテーマの幅広さと奥深さを、初級経済学の講義により適切に反映すれば、社会経済的に恵まれないバックグラウンドを持つ学生が、この科目への関心を強める手助けとなる。
また、経済学の中で、より適切でインクルーシブな言葉を用いることもできる。「低いスキル」「低い能力」「タイプが劣る」といった言葉は、疎外的で侮辱的だ。
教え方と教える内容を改善してインクルージョンを促進するうえで、エビデンスに基づくさまざまな介入措置が存在する。アクティブラーニングの手法を用いたり、インクルーシブなコミュニケーションを取り入れたりすることは、その一例だ。
            
    

  
  
  
          
          
          
          
          


