博士号人材のパイプラインを構築する

 このような取り組みは、大学で見られる経済学と他の学問分野との社会経済的格差に対処するうえで、効果を上げる可能性がある。とはいえ、その格差の中には、学部課程と博士課程の間のどこかで生じるものもある。この点については、人材パイプラインを意識的に構築することが特に重要だ。

 経済学博士への道は、おそらく他の多くの分野より複雑だ。博士課程への出願が認められるには通常、さまざまな高等数学のクラスで好成績(数学専攻ではない場合)を収めることに加え、研究助手の経験も求められるからだ。

 優れたメンターシップ制度はいくつかあるが、社会経済的に恵まれないバックグラウンドを持つ経済学者の卵を支援するリソースとメンターシップを拡充するために、もっと多くのことができる。人口構成がより多様な――そして卒業生を博士課程に送り込む一流の「フィーダースクール」ではない――公立大学については、特に当てはまる。

 筆者らは、学界で人材パイプラインのダイバーシティを促進する諸々の取り組みから学ぶ中で、次のことを知った。尺度が社会経済的背景であれ人種やジェンダーであれ、過小評価グループに属するすべての人たちに対し、フィードバック、メンターシップ、サポートの機会を過剰なまでに拡大してこそ、彼らを助けることになるのだ。

 これらの取り組みには体系的なものも含まれる。しかし、個々の関係性がキャリアの方向性を変える可能性がある職業においては、その職に就いている個々人が自身の行動を振り返り、改善することも改革の一環として求められる。

 教授陣は、学生のために自分の時間をどのように使い、いかに支援すべきか検討する必要がある。そして、高等教育を受けた経験の少ない家庭出身の学生について、次のことも理解しなければならない。

 彼らはおそらく、教授陣との関係構築に、消極的になりがちだ。また、自身のキャリア目標に向かう道筋について、あるいは何を要求すればよいか(助言、サポート、研究助手の職、推薦状など何であれ)について、よくわかっていない可能性が高い。さらに、彼らがキャリアで成功を収めるために必要なスキルの中には、過去の経験を通じた習得が難しいものが含まれるかもしれない。

 したがって教授陣は、社会経済的に恵まれないバックグラウンドを持つ学生に対し、経済学者へとつながる学業と仕事の道筋全体を通して、充実したサポートを特に積極的に提供すべきなのだ。

 最後に、私たちが問題を完全に解決できるようになるには、まず問題に対する理解を深める必要がある。

 近年、経済学におけるジェンダーと人種に関する調査・研究に加えて、この状況を改善するためにプログラムを厳密に検証する動きが増えている。これらの取り組みは大いに必要とされている。しかし、社会経済的バックグラウンドに焦点を当てた取り組みは極めて少ない。なぜ経済学にこの問題が存在するのかをより深く理解し、最善の解決法を知るためには、このテーマに関するさらなるデータを収集し、問題に目を向ける必要がある。

 経済学における人種とジェンダーのダイバーシティの問題に対処すべく、私たちは遅ればせながら前進している。いまこそ、ここに社会経済的バックグラウンドも含めた取り組みを行うべきだ。


"Economics Needs More Socioeconomic Diversity," HBR.org, June 10, 2022.