リーダーシップ行動の構造を分析する

 リーダーシップ論の専門家は伝統的に、リーダーシップをいくつかの行動に分けて説明してきた。たとえば、難しい会話をすること、信頼を築くこと、フィードバックを行うこと、コーチングを実践すること、人々を鼓舞すること、影響力を発揮すること、相手の行動を変えさせることなどである。

 リーダーを目指すならば、これらの行動をそれぞれ個別に習得すべきとされる。だが、それは時として、極めて難しい。そのような行動の一つひとつが独自の枠組みと構成要素を持っており、必要とされることをすべて習得し、実践することは容易でないからだ。

 しかし、著者らがメントラ・インスティテュートで顧客に提供しているリーダーシップワークショップでは、この「行動モデル」に関して、より根本的な問題が浮かび上がっている。

 ジュリーとゴードンのやり取りに話を戻そう。ゴードンの辛辣なコメントに反応した時、ジュリーは彼と難しい会話をしていたのか。ゴードンとの間に信頼を築こうとしていたのか。あるいは、フィードバックを行っていたのか。コーチングを実践していたのか。それとも、相手を鼓舞していたのか。行動を変えさせようとしていたのか。

 ジュリーは、これらのすべてを実行していたのではないだろうか。それも、わずか35秒の間に、である。

 これらの行動は、互いに切り離すことができないように見える。その点を念頭に置いた場合、リーダーシップの構造を改善し、さらに学習しやすいものにすることはできないだろうか。

 メントラ・インスティテュートの研究チームは過去10年以上にわたって、どのような瞬間に優れたリーダーシップが発揮されたかを特定するために、1000以上の事例を分析してきた。人々が同僚やパートナー、敵対者、オーディエンス、さらには友人や家族との間で行われる会話、ミーティング、対立、交渉、スピーチを通じて、目覚ましいインパクトを生み出した実例について調査してきたのである。

 一見すると、リーダーシップが発揮された状況や個々の反応には、多くの違いがあるように思えた。しかし、さらに掘り下げて検証を進めていくと、3つの共通するテーマが浮かび上がってきた。