「エネルギー/アクション」アプローチが
もたらす3つの利点

 筆者らは顧客と協働する中で、「エネルギー/アクション」アプローチを用いるようになった。このアプローチには、3つの利点があるからだ。

 ●達成可能であること

 学習の科学によれば、ある物事に習熟するには、それをいくつかのシンプルな要素に分解し、まず個々の要素について学習と練習を行ってから、すべてを組み合わせるプロセスを経る必要がある。アクションの大半は、5~10秒程度で実行できるものだ。そのため、リーダーとしての行動の仕方すべてを学ぶより、簡単に習得できる。

 ルルレモンのHRマネジャーは、「エネルギー/アクション」アプローチのトレーニングを始めて数週間後、次のように語っている。「実践すべきアクションは非常にシンプルであるため、すでに日々の仕事と私生活に多くを取り入れています」

 ●自分を偽らずに済むこと

 このアプローチでは、そのつど適切なアクションを選び、自分を偽らない形でそれぞれのアクションを実行しなくてはならない。そのためには、まず自分の言動と思考や感情を調和させる必要がある。

 SAPのエンジニアリングマネジャーは、次のように述べている。「ほかの誰かがつくったツールや枠組みを探す必要はありません。むしろ、自分の核を成す5種類のエネルギーを活性化させることに力を注ぎ、適切なアクションを通じて、それを表現すればよいのです」

 ●機敏に対応できること

 新しいアクションは数秒ごとに選択できるため、状況の変化に応じて、アクションの道筋は変わり続ける。自分のアクションがうまくいかなかったり、相手が抵抗するのを感じたりすれば、それに応じて機敏にアクションを変えることができるのだ。

 ユナイテッドヘルス・グループの経営幹部は、次のように述べている。「エネルギーとアクションを重視したアプローチを採用することで、その時々の状況に合わせて、自分の行動スタイルを修正できるようになりました」

「エネルギー/アクション」アプローチを採用すれば、いくつもの小さなステップを通じて、リーダーシップに習熟することが可能になる。一つひとつのステップを経るごとに、行動のレパートリーが拡大し、大きく飛躍することができるからだ。

 ガンジー、リンカーン、マザー・テレサ、マンデラといった人たちが、平凡な人間から傑出したリーダーに変貌できたのは、この「小さなステップと大きな跳躍」を目指すアプローチのおかげだったのかもしれない。


"Small Actions Make Great Leaders," HBR.org, June 22, 2022.