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リーダーとは、強さと自信、そして有能さを前面に押し出すべきものとされてきた。しかし、現在のように変化の激しい環境においては、むしろ自身の不安や弱さを武器として、部下を率いていくほうがうまくいく。とはいえ、不完全な部分を見せるのは居心地が悪く、部下から「自信がない人物」だと見られてしまうのではないかと心配になるのも無理はない。本稿では、周囲からの信頼を失うことなく、自分の弱さを相手に見せる手本となるための3つのスキルを紹介する。

強さや有能さを示せば信頼されるのか

 ファビアンは、リーダーシップ研修のコースが終わった時、不安を感じていた。自分がどのような行動を取るべきかは、よくわかっていた。けれども、実際にどうすれば、そのような行動を取れるのかがわからなかったのだ。

 ファビアンは、ある世界規模の建設会社で、低い地位から出発して、叩き上げで昇進を重ねてきた。1994年に大学を卒業してこの会社に就職すると、まずマネジメント研修の一環として、さまざまな部署を経験させられた。その時、学んだことがあった。優れたリーダーはオペレーションの効率性と完璧性をチームメンバーに要求すると知ったのだ。

 それ以来、ファビアンはキャリアを通じて、リーダー層に上り詰めた人たちの行動を模倣するように努めてきた。つまり、常に「チームで最も賢い人間」であろうとしてきたのだ。

 しかし、この5年間、ライバル企業との競争に敗れることが増えていた。ファビアンの率いるチームは、顧客ニーズの変化に対して迅速に対応できなくなっていた。しかも、チームの中でも特に優秀な3人のメンバーが相次いで退職してしまった。他社に負けない好条件を提示したにもかかわらず、彼らを引き留めることができなかったのだ。ファビアンは次第に、「あらゆる問題に対して解答を示せる」という自信を失い始めていた。

 そのような時、会社の指示で参加したのが、このリーダーシップ研修だった。研修では、変化に対する組織の適応力を高めるには、何か新しいことに挑戦することに従業員が前向きになるようにしなくてはならないと強調していた。自分のチームのメンバーにそのような行動を取らせるには、メンバーが何か新しいことを実験し、学習することに安心して取り組める文化を構築しなくてはならないと、ファビアンは気づいた。

 しかし、研修を終えて帰路に着こうとしていた時、不安がこみ上げてきた。自分の信頼性を損なうことなく、しかも自分が学習と失敗を歓迎していることを示すには、どうすればよいのか。自分を「自信がない人物」だと見せるのではなく、自分の中の弱さを他者に見せる手本となるには、どうすればよいのか。ファビアンは途方に暮れていた。

自信を持って、弱さを見せる方法

 リーダーの中には、自身の不安と弱さを武器にすることに対して、苦労する人が多い。変化の激しい環境では、支配型リーダーシップよりも、このようなリーダーシップスタイルのほうがうまくいく。しかし不安や弱さを武器にするような行動を取ることを、居心地悪く感じるリーダーが少なくないのだ。

 実際、自分の不完全な部分を見せたくないという思いは、リーダーがしばしばインポスター症候群に悩まされる原因でもある。新しい役職に昇進したばかりで、新たな人間関係を築き始めた段階では、そのような悩みを抱く人が特に多い。

 もちろん、弱くあることが偉大なリーダーの条件というわけではない。変化のペースが速く、謙虚であることと学習する姿勢を持つことが必要とされる環境においても、弱さしか見せないリーダーは、自信がないという印象を持たれかねない。

 では、どのように適切なバランスを取ればよいのか。本稿では、上手に弱さを見せるためのスキルを紹介する。