●倫理的問題について謙虚な態度を取る

 リーダーは、自分自身が倫理的・道徳的問題にどの程度強い関心を払っているか、周囲に見られていることは認識している。そして、職場でしばしば非倫理的行動が横行していることを考えれば、リーダーはチームメンバーの倫理的行動を促す方法を見出さなくてはならない。

 しかし残念なことに、他者に倫理的行動を促そうとすると、ネガティブな反応が返ってくる場合がある。たとえば、リーダーが倫理観の高い基準を打ち出すと、偽善だと言われたり、チームメンバーをしらけさせたりしかねない。そうなれば、相手が倫理的問題に無関心になったり、倫理基準を軽んじたりする可能性がある。

 逆説的に聞こえるかもしれないが、相手に倫理的行動を取らせたい時には、リーダーがそのような問題について謙虚な態度を取ったほうがうまくいく。これについて、リーダーが取ることができる行動は2つある。一つは、倫理的問題を解決するに当たって、みずからが過ちを犯した経験があるという認識を示すこと。もう一つは、 他者が倫理的問題の解決策を見出すことを受け入れる意思を示すことだ。

 重要なのは、相手が持っている倫理面の強みを十分に評価し、自分以外の人たちも倫理的ジレンマを解決するための知識とスキルを持っているとはっきり認めることだ。それにより、倫理的問題への関心を高め、対話を生み出せるだけでなく、リーダーが倫理面で上に立とうとしているのではないかという部下の警戒心を解くこともできる。

 たとえば、ある研究では、中国企業13社(製造、不動産、テクノロジーなど)のリーダー64人と部下295人を対象に調査を行った。調査対象者には、研究、製造、営業をはじめとする、さまざまな職種が含まれていた。フォローアップ研究として、米国で250人を対象とする調査も実施された。

 この2つの研究結果によれば、リーダーが倫理的問題の解決について、過去にみずからが過ちを犯した経験を打ち明け、部下の意見を歓迎する姿勢を示した場合、部下が会社への経費申請のレシートを偽造するといった非倫理的な行動を取る可能性が低くなるという。

 また、リーダーが倫理的問題に関して謙虚であるという印象を抱いた時に、部下は社会にとって好ましい協調的行動を取る傾向が強まることも明らかになった。たとえば、会社を休んでいる同僚を助けたり、過酷な業務負担を抱えている同僚をサポートしたりする可能性が高まるというのだ。

 このような無償の行動を取るケースが増えるのは、部下がそれを正しい行動だと感じるからである。そのような認識は、リーダーが倫理面で部下より上に立とうとするのではなく、謙虚に振る舞った時のほうが形成されやすい。

 謙虚さとは「傲慢さと卑屈さの間に位置する、人間性の最も優れた部分である」といわれる。しかし、謙虚であることは容易でない。多くのリーダーは「実際に、私のチームの心理的安全性と適応力を高めるには、どうすればよいのか」と考えずにいられない。

 つまるところ、自信を持って自分の弱さを見せるには、自分に自信が持てない状態を正しく認識し、みずからのインポスター症候群を克服することが求められるのだ。


"How to Build Confidence About Showing Vulnerability," HBR.org, July 14, 2022.