ハイブリッドとオフィス復帰

 働きがいのある職場とは、もはやオフィスに限らない。ハイブリッドワークを長期的な戦略の一部として位置づける企業は増えている。

 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のようなグローバルなハイテク企業は、未来のオフィスのあるべき姿を再考しており、それは理にかなっている。HPEは非常に現実的な問題である、人材の誘致、維持、減少に対処するために社内調査を実施し、従業員の3分の2が物理的に共有されているスペースでの仕事を労働時間の20%以下に抑えたいと望んでいることがわかった。

 HPEのチーフピープルオフィサーのアラン・メイは「チームメンバーが、バランスが取れていると感じれば、生産性が向上し、HPEでキャリアを築く可能性が高くなると理解している」と述べる。「パンデミックによって、人々は自分にとって何が重要かを見直した」

 このデータを受け、HPEの幹部は6万人規模の会社全体をハイブリッド化する決定をした。従業員がいつオフィスに出社するかを選択できるようにし、オフィスの環境も変え、コラボレーションや交流のためのスペースを増やす計画だ。大規模な集まりは減らし、少人数で集まることができる場や個人用デスクのスペース拡大した。さらに、夕食のテイクアウトや必要な食料品などの特典を提供し、デスクではなく、自宅で家族と一緒に料理や食事ができるようサポートする予定だ。

 メンタルヘルスへの意識、公平性を高めることへの注力、ハイブリッドやフレキシブルな働き方、従業員の声により積極的に耳を傾けること、リアルタイムのフィードバック、個人に合ったコミュニケーションなど、バーンアウトをめぐる問題を解決しようとするかつてない取り組みが行われている。

 しかし、ハイブリッドワークはまだ調整が必要だ。従業員が好きな時に出社できるようにすると、オフィスにいる人はZoomで在宅勤務の同僚と打ち合わせをすることになりがちだ。ハイブリッドをより効果的にし、職場の人間関係を向上させるために、可能な限り同僚が直接つながる時間を確保すべきだ。孤独や人とのつながりの欠如は、パンデミックの負の側面の一つであり、対面での仕事とリモートワークの適切な組み合わせを見つけることが重要だ。

有給休暇

 労働力の再考において、もう一つの把握すべき主要な動向が有給休暇だ。有給休暇はパンデミック下や将来の危機の際に、従業員にとって非常に重要な分野だ。

 企業の福利厚生に関するカイザーファミリー財団(KFF)の調査「Employer Health Benefits Survey」2020年版によると、従業員の10人に4人近くは、パンデミックの発生以降に有給休暇の提供を開始したか拡大した企業に勤めている。グローバル企業の中には、有給休暇制度を充実させることで、他社と一線を画しているところもある。

 たとえば、グーグルは育児休業を18週間から24週間に拡大。また、重病の家族を介護する従業員のための有給の休業を倍増して8週間にし、年次有給休暇の日数も15日から20日に増やした。

 A&Tは当初、賃金全額支給の10日間の病気休暇を提供し始めたが、パンデミックの拡大に伴い、これを倍の20日間にしたベライゾンの新型コロナウイルスに特化した新しい休暇制度では、全額支給の有給休暇を40日間提供し、新型ウイルスと診断された従業員は、最長26週間の賃金全額支給による病気休暇を取得することができる。

 筆者がパンデミック下で話を聞いた医師らによれば、これは必要な改善だ。従業員に適切な病気休暇が与えられないと、職場に病気が持ち込まれ、それが瞬く間に広がり、医療制度に過剰な負担をかけることになる。

 注目すべきは、グーグルの新しい有給休暇の規定には、一般的な忌引きに加え、死産や流産を体験した場合の忌引き休暇も含まれていることだ。同社にはまた、「ランプバックタイム」と呼ばれる取り組みもあり、産休明けの最初の2週間は、賃金は変えずに最低就労時間を通常の50%にしている。