YMCAワークウェルのラーニング・アンド・ディベロップメントディレクターであるケイト・トスは、「メンタルヘルスについてオープンに議論できる心理的安全性を求めている」と言う。「自分が1人の人間であり、1人の人間として真のケアを必要としていることを認識するため、共感とサポートを求めている。仕事量を管理することから始めたい」

 クイーンズ大学に勤めた経歴を持ち、現在はユナイテッド・スティールワーカーズ・ローカル・2010に在籍するネイサン・ヴァッチャーが最も求めているのは、共感であり、その次が僅差で週4日勤務だという。

 リーダーシップコーチの資格を持つデイビッド・エーレンタールは、言葉だけでなく行動や振る舞いで変化を示すことが基本だと指摘する。

 データもこうした見方を裏付けている。最近のギャラップの調査では、米国の従業員1万3085人に、提示された仕事を受け入れるかどうかを決定する際に最も重要なことを尋ねた。61%が「ワークライフバランスの充実」と「個人のウェルビーイング」を、58%が「自分のベストを尽くせること」を挙げた。

 そして、この世界的な離職の波によって生じたパワーダイナミクスの変化により、従業員はより多くを求めるようになった。

 HBRの論文「従業員にフルタイムのオフィス勤務を強制すべきではない」で、著者のバレロ、ブルーム、デイビスは、フルタイムのオフィス復帰を命令されたら別の仕事を探し始めるか、すぐに辞めると答えた米国の従業員が40%に上ると論じている。

 2021年のマッキンゼー・アンド・カンパニーのリポートでは、従業員5770人を調査した結果、過去6カ月に仕事を辞めた回答者の40%が新たな職を得ずに退職していることがわかった。

 一見すると従業員が入れ替わっているだけのようだが、実は重大な問題であることをこれらのデータは示している。そして、企業にとって重要なことは、この問題に対処しなければならないということだ。

 幸いなことに明るい兆しも見え始めている。企業がようやくそれなりの対応をする準備が整ったことを示しているのだ。

 ここでは、前向きな変化が起きている分野を紹介しよう。