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新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、人々は生き方を見直し、よりよい生き方を求めて退職を選択する人が増えた。従業員に選択権が大きくシフトしたことで、企業は従業員に選ばれる職場環境の構築と、有給休暇をはじめとする福利厚生の拡充、さらには公平性の向上が迫られている。本稿では、各所の調査結果をもとに、足元で起こっているこれらの変化を整理し、とらえ直す。

パンデミックで変化した仕事観

 当たり前のことかもしれないが、この2年間に我々はともに死と向き合ったことで変化した。もちろん、多くの人はパンデミック前にも大きな困難に直面していたが、この共通の体験は類のないものだ。我々の生活の中で劇的に変化したことの一つに、仕事に対する考え方がある。

 慢性的なストレス、経済的不安、そして共通の悲しみという重圧を抱えて働くことで、同じ目標に到達するためにより懸命に、長時間働くことを余儀なくされた。そして、疲れ果て、自分の可能性を認知する自己効力感が低下し、シニシズムが高まった。結果として壁に突き当たるのも無理はない。しかし、世界の労働人口の半数近くがほぼ同時に「退職します」と宣言したことは、やはり衝撃的だ。

人々が退職する理由

 31カ国、3万1000人以上を対象にした調査報告書「マイクロソフト 2022 ワーク・トレンド・インデックス」は、この異常な労働力の混乱について論じている。労働人口の43%が1年以内に仕事を辞めることを検討しているという。人々が離職する最大の理由の一つは何か。報告書によれば、それは給与の問題ではない。持続不可能な仕事量だ。

 最も説得力のあるデータが「コラボレーション」に費やす時間の増加だ。たとえば、2020年2月~2022年2月の間に下記のような変化がみられた。

・マイクロソフト・チームズを使った毎週の会議が252%増加
・60億通以上のメールが送信された(2021年版の報告書より
・チャットの頻度が32%増加
・時間外労働の平均が28%増加

 パンデミック下、特に隔離の時期は何を優先するかが非常にシンプルだった。ただ生きること、そして愛する人の安全を守ることだけを考えた日々もあった。このような不確実性の高まりが、精神疾患の増加につながった。不安やうつ病の症状を訴えた米国の成人は2019年1~6月は10人に1人だったが、2021年は10人に4人に上っている。

 多くの組織は前に進み続けた。従業員が達成できるかわからないにもかかわらず、高い目標を掲げ続けた。アーンスト・アンド・ヤング(EY)の最近の調査によると、前職を辞めた理由として、労働者の54%が、上司が仕事上の苦悩に共感しないことを挙げた。雇用主が私生活に理解を示さなかったという回答は49%だった。このような組織の旧態依然とした考え方が、「大退職時代」(グレート・レジグネーション)の一因になったと考える専門家もいる。

 ピュー・リサーチ・センターの調査でも、同様の傾向が示された。2021年に仕事を辞めた労働者の57%は、職場で軽視されたと感じたことを理由に挙げ、45%は勤務時間を選択できる柔軟性がなかったためと答えている。また、半数近くが子育ての問題を理由に挙げた(18歳未満の子どもがいる世帯で48%)。

 従業員は今日、仕事との関係を見直しており、取引的だったものから変化している。仕事が私生活に影響しないよう要求することから、「影響するなら辞める」という考え方に変わったのだ。

従業員が求めるもの

 パンデミック下では、あまりに多くの従業員が限界点を超えてしまった。コミュニケーションについての著述家で、ソフトウェア会社COINGの研究者でもあるアニャ・ボジッチは、以前の仕事を辞めた理由について「給料をもらうために最低限度の仕事に甘んじることは、誰にとっても死刑宣告に等しい。選択の機会が豊富にある時にはなおさらだ」と筆者に語った。

 限界に達する人が増える中、リーダーにできることは何か。まずは、従業員が本当に望んでいることに耳を傾けることだ。