公平性の向上
ガートナーの2021年の従業員調査「ReimagineHR Employee Survey」では、従業員3500人の回答を分析し、さらなる公平性が求められていることが明らかになった。同社の人事部門の研究主任、ブライアン・クロップは「より公平な従業員体験の創出は人事部門の幹部にとって2022年の最も重要な取り組みになるだろう」と述べる。「それを実現するために組織はポリシーを超えて、考え方を発展させる必要がある」
女性に対する公平性の欠如による不均衡な影響に対処するため、カナダ政府は女性の労働力参加率を高めるための新たな政策に踏み切った。女性、特に有色人種の女性は保育施設不足の影響を最も受けやすいとして、連邦政府と州政府はその費用を補助しており、2022年4月1日からは保護者が支払う保育料が子ども1人当たり1日10カナダドルになる。
マーケティングとテクノロジーサービスのグローバル企業「メディアモンクス」のグローバルチーフダイバーシティーオフィサー、ジェームズ・ニコラス・キニーは、従業員の権利を守るためにすべてのポリシーに包括的な言葉を採用していると言う。「言葉は重要だ。私たちは発展途上であり、多様な人材で構成される当社のチームのため、使用する言語を常に進化させている」
同社は、同性カップルやノンバイナリーの従業員、養子縁組や代理出産をしたり、里親になったりした従業員を含めるように言葉を見直した。「以前はこのような従業員の多くが、これらのポリシーに自分が当てはまると思っていなかった」とキニーは主張する。同社では現在、全従業員が16週間の育児休業を取得できる。
公平な有給休暇を支援するポリシーを強化することは、無報酬労働時間の大半を占めているのが女性であるという、ダウンストリームエフェクトの影響も軽減できる。公平性の欠如は、パンデミック下において女性の労働力に壊滅的な影響を及ぼした。2020年2月~2022年1月に男性労働者はパンデミックによって失った雇用をすべて取り戻した。しかし、2020年2月~4月に女性の雇用は1220万件以上失われ、大不況の終焉から10年続いた雇用増を減少に転じさせた。
我々はより公平な未来の創造に向けて重要な歩みを進めているが、リーダーは公平性の追求に絶え間なく取り組む必要がある。新たな働く場所は包括的でなければならない。
新しい時代の働き方は前向きな変化をもたらす
世界銀行の推定では、パンデミックを受けて労働者保護の政策を導入または拡大した国は120カ国を超える。しかし、それらの政策のほとんどは、心理社会的な安全ガイドラインよりも物理的な安全ガイドラインを優先している。
幸いにも、オーストラリアやカナダのように、変化を牽引している国もある。たとえば、カナダのオンタリオ州では、就労時間外に従業員を仕事から切り離すための法律「Working for Workers Act」が制定された。「つながらない権利」を認めたこの法律は2022年6月2日に施行され、「つながらないこと」を「メール、電話、ビデオ通話、その他のメッセージの送信や確認など、仕事に関連するコミュニケーションに関与しないこと」と定義している。
このような基準や政策、法律は、これからの働き方においてより一般的になると筆者は予想している。リーダーが法律を恐れることなく従業員のウェルビーイングを守ることが望ましいが、従業員の安全を守る法律には価値がある。組織がより強固なメンタルヘルス戦略に費用を投じることを正当化するのにも役立つ。また、これらの政策が単に「あれば望ましいもの」ではなく、「必要なもの」であることをリーダーが明確に理解できるようになるだろう。
大変なことかもしれないが、新しい時代の働き方は、前向きな変化をもたらす大きな可能性を秘めているはずだ。
良くも悪くも、パンデミックは我々を正念場に追い込み、そして我々は何とか乗り切った。新しいスキルを身につけ、感情の柔軟性を高め、楽観主義と立ち直る力を身につけたのだ。このことを踏まえれば、我々は可能性に満ちた未来を構築するために学んでいるように思える。
"The Pandemic Changed Us. Now Companies Have to Change Too," HBR.org, July 01, 2022.