●自分自身のメンタルヘルスも忘れずにケアする

 ここ数年、コロナ禍前からのことだが、大変な出来事が多い。このような困難な時期に役に立てることはとても光栄なことだが、同時にみずからの感情や不安、動揺を処理しながら仕事を行うことで、自分自身も消耗した。責任が重くのしかかる仕事であり、筆者は疲れ果てている。

 これには、多くのリーダー、教育者、セラピスト、医療従事者なども共感するに違いない。筆者は折に触れて、かかり付けの精神科医から、自分の仕事を短距離走ではなく、マラソンだと考えるべきだと言われてきた。結局のところ、筆者が燃え尽きたり、あるいは抑制不安や鬱病の症状が現れたりしたら、社会変革のための努力は水の泡になってしまうのだ。

 チームをサポートするのと同じように、自分自身をサポートすることが欠かせない。精神的に健全な行動を取って模範を示すことは、従業員のためにもなり、一石二鳥となる。残虐な出来事の後に抱く感情に決まった正解がないのと同様、自分自身をケアする方法にも、どれが正しいということはない。

 筆者の場合は、悲惨な出来事が起きた後は、どちらかというと茫然としていることが多いものの、子どもたちやチームメンバーの無事を確認することで消耗している。筆者にとってのセルフケアは、十分な睡眠をとる、定期的にセラピーを受ける、友人とおしゃべりする、前向きな気持ちになれるテレビ番組を観るといった、ごく基本的なものだ。

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 米国の子ども向け番組の人気司会者だったフレッド・ロジャースのこの言葉に、私はいつも癒される。「私が小さかった頃、ニュースで恐ろしいものを見ると、母はこう語りかけてくれた。『助けてくれる人を探しなさい。そういう人はいつでも見つかるはず』」

 ぜひ「助けてくれる人」になってほしい。悲惨な出来事があろうとなかろうと、今日、そして毎日、自分自身とチームをケアしてほしい。相手に調子はどうかを心から尋ね、自身もみずからの弱さを相手に見せる。直属の部下に休暇を与え、必要に応じて優先順位や会議の予定を調整する。上司に対しても、声がけを忘れないようにしたい。私たちは誰しも同じ人間であり、困難を乗り越えようと最善を尽くしているのだ。

 

"Supporting Your Team’s Mental Health After a Violent News Event," HBR.org, June 29, 2022.