学習者のエネルギーをマネジメントする

 ハイブリッドワークの世界は、新たな疲弊の源を生み出している。たとえば、対面式の働き方をしていた頃に比べて、たくさんの会議や打ち合わせを詰め込む傾向が見られる。その結果、デスクの前からほとんど動かないまま、何時間も過ごすことが珍しくない。

 加えて、ビデオ会議システムで、自分の顔がモニターに映し出されていることの影響も無視できない。コンピュータのモニターに自分の顔が映っているのを見ると、人は自己認識が高まることがわかっている。これは、鏡の中の自分を見た時の反応によく似ている。

 研究によれば、自己認識が高まることにより、好ましい影響が生じる場合もある。自分自身の姿が目に入る時、人は自分が大切にしている価値観に沿った行動を取る傾向があるからだ。

 しかし、常に自己認識を抱くことは、人間にとって自然な状態ではない。セルフモニタリングを過剰に行い、神経を張り詰めて警戒し続ければ、会議や打ち合わせが終わるたびに消耗し切ってしまう。しかも、リカバリー(回復)の時間もほとんどないまま、次の会議や打ち合わせが始まる。そのような疲弊を和らげるための3つの方法を以下に紹介しよう。

 ●休憩を設ける

 どのような学習体験においても、30~60分おきに5~10分の休憩時間を確保することを忘れてはならない。学習時間が長ければ長いほど、休憩時間も長くする必要がある。

 ビデオ会議システムで少人数に分かれて話し合うブレイクアウトルームの活動を、休憩扱いにすべきではない。その時間にほかの参加者と交流する以上、それもよく知らない人と関わる場合はエネルギーを消耗する。内向的な人の場合は、特にそうだ。

 休憩は、完全に休憩の時間でなくてはならない。その時間には、学習とは無関係のことをして過ごす。言わば、「ガソリンをタンクに最充填すること」が欠かせないだ。

 ●休憩時間にリフレッシュを促す

 学習者に5分間の休憩を与えると、大半の人はメールをチェックする。そうしたくなる気持ちはわからないでもないが、そのような行動は学習効果の面で好ましくない。休憩時間にはできればデスクの前から離れるように、ファシリテーターは学習者に強く促すべきである。

 周囲を歩き回って、視界に入るものを変えることが望ましい。日課にしている英単語ゲームの「ワードル」を楽しむなり、ヘルシーなお菓子を食べるなり、自分が心から楽しめることをするのもよいだろう。エネルギーと集中力を取り戻すために最も効果的なのは、何か別のことに意識を向け、それ自体を楽しく感じられる活動だ。

 ●学習者がスクリーン上で自分の顔を見ないように促す

 ビデオ会議システムのズームをはじめ、バーチャル学習で用いられるプラットフォームの中には、ほかの参加者の顔はスクリーン上に見えているが、カメラをオフにして自分自身の姿はスクリーン上に映さないように設定できるものもある。

 このような機能があることを、学習者に伝えるのもよいだろう。自己認識を持つことで、エネルギーが消耗する場合があることを知らない人も多いからだ。この種の機能がないプラットフォームを利用している場合は、スクリーンのしかるべき場所に付箋を貼ればよい。