人々が誰に権威を求めているかを見極める
パワーがさまざまな形で獲得され、行使されることを理解したら、パワーの利用に成功している人のリストを作ろう。たとえば、社内の誰もが知っている人(同一視力)、新しいプロジェクトの実施を必ず承認してもらえる人や、スタッフ増員のためのリソースを持っている人(情報力や報酬力)など、さまざまな形のパワーを発揮する人に注目するとよい。
また、人々から常に支援やアドバイスを求められている人を探そう。研究によると、人は自分のネットワーク内の多くの人にアプローチすることで卓越した仕事ができるが、周囲から頼られ、求められる場合、成功する可能性は4倍になる。
「誰が社内で高く評価されていますか」とか「優れた成果を出すには、この会社で誰と知り合う必要がありますか」と、あなたの身近な同僚に質問しよう。成功の指標として、誰が早く昇進しているかを調べてもよい。また、理事会や外部との接触があるイベントなど、シニアリーダーや顧客に近づく機会のある注目度の高い会合に、周囲の誰が招かれているかにも目を向けよう。
影響力は状況によって変化することを認識する
社内のパワーダイナミクスは固定化しているように見えるかもしれないが、実際には、パワーは動的なものである。たとえばこの2年間で、多くの組織でハイブリッドワークへの移行が進み、パワーバランスが著しく変化した。
最近の研究によると、この新たな労働環境では、しばしば関係性のパワーがヒエラルキーのパワーを凌駕する。肩書きのない人でも影響力を持つチャンスがあり、上級職だからと言って影響力を持っているとは限らない。時間の流れとともに社内でパワーを得る人もいれば、失う人もいることを覚えておこう。
たとえば、筆者は最近、あるDEI(ダイバーシティ<多様性>、エクイティ<公平性>、インクルージョン<包摂>)リーダーのコーチングをした。彼女はこれまで、人事チーム以外の場ではほとんど目立たない存在だった。ところが黒人男性ジョージ・フロイドが殺害された事件を契機に、ブラック・ライブズ・マター運動が盛り上がると、数十社からCEO直属のDEI担当としてオファーが次々に舞い込んできたという。
同様に、会社の財務部門でESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)担当ディレクターを務めるクライアントは、突然、経営幹部レベルの職務に昇進した。近年、ESG戦略を要求する投資家や顧客、従業員が増えているため、彼女の専門知識は、思いがけず社内で大きな影響力を持つようになったのである。