●自社に財務の「警報システム」を整備する

 ほとんどの企業は、危険に気づくのがあまりにも遅い。その理由の一つは、事業部門の予算は通常、売上高と経費(損益計算書に使われる項目)を追跡しているが、キャッシュフロー計算書や賃借対照表の項目については確認していないからだ。

 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の3つは、経営幹部レベルでは結びつけて検討されるが、現場レベルでも損益に関わる者は目を配らなくてはならない。

 彼らは受注減少や在庫拡大、あるいは支払遅延に真っ先に気づく可能性が高いにもかかわらず、資本コストを事実上無視し、企業における資金や貯蓄の情報源として賃借対照表に目を向けることはめったにない。その結果、自分が現場で目にしている物事の幅広い意味合いを、しばしば見落としてしまう。

 事業部門を動かしている誰もが、その事業の3つの側面(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を見られるように、事業計画や予算計画、そして月間レビューや四半期レビューの仕組みを再設計することが欠かせない。

 売上高の最も脆弱な部分はどこか、需要が急減したらどうなるかを理解する。どのコストを削減する必要があるか、どの資産が影響を受けるか、どのような兆候を警告と見なすべきかを把握することだ。

 ●キャッシュの創出を最大化する

 状況が厳しい時、あるいは何かがおかしいと感じられる時は、キャッシュこそがキングだ。金利が上昇している時は、特にそうだ。したがって、自社の事業計画に運転資金管理イニシアティブを盛り込むことである。

 キャッシュの創出を高める方法には、債権・債務管理方法の変更、在庫削減、物流のスピードアップなどが含まれる。いつまでに、どの部門が、どれだけ現金を確保できるかを具体的にしたうえで、その進捗状況と実際のキャッシュの創出を積極的に監視する。

 与信枠を縮小して、現金を増やす。さらに、賃借対照表の内容をしっかりと検証する。トラックは借りるよりも所有したほうが、手元の現金は増えるか。まだクラウドに移行していないIT資産は、どのくらいあるか。資産や工程をアウトソースすれば、固定費は変動費に変わり、現金のニーズを調整できる。