●潜在的なシナリオを作成する

 不況のレベル(軽微、中規模、大型)によって、事業部門全体あるいは一部が受ける影響を予想する。具体的に考えることが重要だ。

 インフレに対して最も脆弱な領域はどこか。需要減に弱い領域はどこか。サプライチェーンの混乱に最も影響を受ける領域はどこか。それぞれのケースで、誰がリーダーとなり、どのような対策を講じるかを考える。

 そのうえで、3つのシナリオを想定して、それぞれの対応策を用意する。いわば、いざという時、すぐに引くことができる3つのレバーだ。

 第1のレバーは、気軽に引けるものである。長期的なダメージを生じさせることなく、現金を溜め込む措置といえるだろう。たとえば、採用や出張の凍結、裁量的支出の削減、マーケティング費用の一部削減といった対応だ。

 第2のレバーは、第1のレバーよりも痛みを伴う。景気の落ち込みが深刻で長いと見なした時に引くものだ。これには、新製品の発売延期や保守整備以外の設備投資の削減が含まれる。

 第3のレバーは、危機的な状況を前提として用意する。レイオフや組織再編、資産や事業の売却のように、事業が突然大きなトラブルに陥った時に引くものだ。できる限り、競合他社の対応も予想してみる。不況の時、ライバル企業が最も打撃を受けるのはどの部分か。彼らはどのような対策を講じるか。

 これらのシナリオが必要ではない、いまこそ用意をすることが重要である。そうすることで、いざ問題が生じた時は、どう対応するかではなく、いつ対策を講じるかを判断すればよい。またそれぞれのレバーを引くべきタイミングを判断する指標を、あらかじめ設定しておくことで、警告を無視しにくくなる。

 さらに、月間レビューや四半期レビューの機会を利用し、計画に照らして実績を評価するだけでなく、計画の前提自体を再確認しよう。状況が急変している時には、半年前には事実だったことが、もはや事実ではなくなっていることがある。それはあなたの予想が間違っていたのではなく、状況が変わったのだ。