●前年をベースに考えない

 経費と売上高は、積極的に確認する必要がある。前年に基づいて予算を考えるのではなく、あくまでもゼロベースの思考で、事業がどこでどのように価値を生み出しているか、あるいは生み出していないかを把握することが欠かせない。

 大半の企業は、経常支出に蓄積した項目を整理する時にしか、このアプローチを採用することはない。だが、これは構造改革や作業負荷軽減の機会を見出すための強力な方法である。

 売上予測を立てる時も、同じように厳格な姿勢で取り組もう。予算のほとんどは、売上高よりもコストに厳しい目が向けられる。CFOは、営業チームの売上予測を軽視する一方、コスト面を軽視することはけっしてない。

 この問題を是正するには、まず、大口顧客に注目することだ。つまり、あなたが定期的に率直な会話を交わしているはずの相手である。そして、コストに対して行うのと同じように、売上高の増減のすべてについて、いつ、誰によって、どのように引き起こされるかを明確にする。できる限りの範囲ではあるが、これは事業計画の数字の証拠になるだろう。実際にこれらがどう反映されたかは、月間レビューおよび四半期レビューで確認する。

 顧客の収益性を分析することで、売上高計画にさらなる価値をもたらすこともできる。多くの場合、顧客の20%は実際には、自社に損失を与えている。健全な企業ならば、定期的に顧客リストを見直し、整理しなくてはならない。

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 本稿で紹介した4つの措置をいますぐ講じれば、厳しい時期に備えることができる。また、これらの措置を制度化することで、他の企業よりも、レベルの高い事業計画や予算計画を策定することができるだろう。それらは、単に事業や予算を管理するだけでなく、具体的なアクションを念頭に入れた計画になるはずだ。

 仮に景気後退が起きなければ、それはそれでよい。より強力で、より大胆な事業が構築できているはずであり、自社の事業活動にすぐに使える資金の準備もできているのだ。


"Setting Your Annual Budget Amid Economic Uncertainty," HBR.org, September 01, 2022.