●アンカーに引きずられないようにする

 小売りの世界には、アンカリングが至るところに存在する。顧客に「お得な買い物だ」と感じさせるための手段になっているのだ。その最たる例が、商品の実際の価値とはほぼ無関係の不当に高い「元の値段」から、大幅な「値引き」をする大規模小売店だ。

 たとえば、「元の値段」が800ドルのソファが、値引きされて200ドルまで下がっていると、お買い得のように見える。企業は、そのソファーの価格がそもそも800ドルであるべき根拠がないにもかかわらず、しばしばこのような「値下げ」をする。

 アンカリングから抜け出す方法はある。その第一歩は、情報を明確にすることだ。根拠が明らかであれば、騙される可能性は低くなる。たとえば、筆者が大きな決断をする時はたいてい、関係するすべての要素を書き出す。情報を書き出すことで、その信頼性を評価し、無関係のアンカーを排除することができるからだ。

 同様に、自分の判断について話すことも役立つ。筆者の場合、友人や同僚に助言を求め、自分がなぜそう判断したのか、理由を明確にすることで、どのようなアンカーがあるのかを浮き彫りにしている。

 重要なのは、次の問いである。

「この決定や判断を下すために、私はどのような情報を使っているか。それは正確で適切か。その重要性を私は正しく判断しているか」

 もし根拠が乏しいと感じたならば、それはアンカリングに陥っている可能性があるというサインだ。それはまた、さらなる調査が必要であることを示すサインでもある。それについては、次の項目で解説しよう。