この考え方をさらに探るために、筆者は過去15年間にわたり、世界17カ国の最高経営幹部1000人以上を対象に質問調査を行った。これはシンプルなアナロジー(類推)を行ってもらうもので、具体的には「リーダーシップとは○○であるのに対して、マネジメントとは△△である」という文章の空欄を埋めてもらった。

 その結果、両者を類比する数千の言葉が得られたが、それらの中から少数だが典型的な例を、3つのカテゴリーに分けて紹介しよう。2つの異なる機能の相互作用について、私たちがどのような思い込みを抱いているのか、具体的に例示されている。

・哲学:主観的/客観的、感情/理性、ソフト/ハード、価値観/事実、情熱的/合理的、韻文/散文、曲線的/直線的、ロマン主義/啓蒙主義、芸術/科学、質的/量的、絵柄/色彩

・行動:戦略/作戦、変化/安定、解釈/分析、目的/計画、明日/今日、連続的な/慎重な、作成する/実行する、開始する/勢いづける、火花/酸素、特許/生産、コンパス/GPS、建築/契約締結、景観整備/造園、コーチング/トレーニング

・関係:インスピレーション/動機、門弟/従業員、情熱/賃金、解放/監督、変革/実行、人/場所、個人/状況、一人/多数、メンター/社員、指揮する/従う、全力疾走する/ゆっくり歩く、愛する/好む

 このような二分法を受け入れ、それらに従って役割を調整したくなるのは理解できる。リーダーは組織図のトップに位置し、マネジャーは中間層に位置するのだ。

 筆者は、これらのアナロジーを貫くリーダーシップとマネジメントの区別について何ら異存はないが、2種類のスキルとスタイルを「リーダーのもの」あるいは「マネジャーのもの」と分けることには異議がある。CEOはリードするだけでなく、マネージする必要もある。中間層のマネジャーにも、リーダーシップのスキルが必要だ。

 ベニスはかつて「リーダーは正しいことをするのに対して、マネジャーは物事を正しく行う」と言った。リーダーとマネジャーを分かつことの問題点は、まさにこの言葉にある。

 両者を区別するのは結構だが、リーダーの仕事とマネジャーの仕事は別のものだと間違って主張してはいけない。正しいことを行っても、その出来がお粗末なものならば意味はない。同様に、物事を正しく行っても、それが間違ったことならば意味はない。成功する経営幹部はリードもするし、マネージもする。どちらかを別の誰かに任せるのではない。