HBR Staff

ツイッターはイーロン・マスクにより、どのように変わるのだろうか。これは、既存のテック企業が戦略をいかに転換するか、という身近な問題である。本稿は、テック企業の方向性を根本的に変えるための戦略の進め方、実行する方法として、5つの原則があると論じる。筆者らは、マスクがどのような道を選ぶにしても、効果的な戦略転換のために、ここで論じる5つの原則に従うことが必要だと指摘する。なお、本稿はツイッターの買収完了前にHBR.orgで公開された記事である。

戦略を転換するための5つの基本原則

 先行き不透明な数カ月間を経て、イーロン・マスクは440億ドルでツイッターを買収する手続きに踏み出したようだ。

 次の大きな問題は、彼が同社をどのように変えていくのか、ということだ。彼がツイッターを具体的にどうしたいのかは、なかなかはっきりしないが、テック企業の戦略をどう転換するかという問題は身近なものだ。マスクが克服しなければならない課題は、「社外から来た新任役員」や「新規取引に臨むプライベートエクイティファーム」「コングロマリットが買収した事業部門の統括」などで直面する課題と似ている。

 特有の課題もある。一つは、マスクがこれまでやってきたことは主として新規ビジネスの立ち上げであって、既存ビジネスの改革ではないということ。もう一つは、ツイッターがソーシャルメディアビジネスの課題を典型的に表していることだ。つまり、どのように収益化し、どのようなコンテンツを規制(検閲)し、社会でどのような役割を果たせば価値を最大化できるか、といった課題である。

 そのような特殊性はさておき、テック企業の方向性を根本的に変えるような戦略の進め方、実行する方法には、ベストプラクティスの枠組みが存在する。リーダーなら誰もがこの枠組みに従うべきだ。筆者らは、マスクがどのような道を選ぶにしても、効果的な戦略転換を行うには、5つの基本原則に従うことが必要だと考えている。

原則1:一つの目標を優先する

 新しいリーダーは、新しい戦略を立案し、実行に移す前に、最優先する一つの目標を明らかにする必要がある。それは、長期的な収益成長なのか短期的な収益性なのか、既存の顧客価値なのか斬新な新製品なのか、といったことだ。革新的な企業の経営者は、常にこのようなトレードオフに対処している。

 最優先する目標を明確にしなければ、ほぼ確実に、相反する目標を追求することになり、良くて非効率な戦略、最悪の場合、自滅的な戦略につながる。明確な優先順位がなければ、リーダーは組織全体の足並みを揃える戦略を立てることができない。明確な優先順位があれば、事業部門や現場の従業員は、優先順位を独自に判断するようになる。さもなければ些細な決断も上に委ねるようになり、経営陣がよりハイレベルな戦略に集中できなくなることも考えられる。

 マスクは過去、この点で成功している。たとえばテスラでは、短期的な収益性よりも成長を重視した結果、新製品のイノベーションを進めながら、生産規模の拡大に全力を傾けることができた。(彼にはその優先順位に賛同してくれる投資家がいる)

 ツイッターでは、それが難しいかもしれない。理由の一つは、すでに目標がある組織にアウトサイダーとして入るということ。さらにマスクは「収益向上」と「利益を度外視した改革」のような対立する目標を追求せよとあらゆる方面から迫られるだろう。マスク自身は、会社の社会的価値に関心があることを示唆している

 どれも正当な目標だが、まずは一つに絞る必要がある。それに基づいて戦略を設計し、実行し、周知すべきだろう。