
これまでの仕事には、男性に関連づけられる典型的な特徴や行動が報われ、それが標準的な慣習と見なされる「男性的デフォルト」が蔓延していた。しかし、パンデミックによる働き方の変化により、ジェンダーバイアスに則った働き方は最善ではないことが判明している。筆者らは、いまこそリーダーは組織の男性的デフォルトを見直し、あらゆるジェンダーを受け入れる組織文化の構築に着手すべきと説く。本稿ではリーダーが組織の状況を把握する方法、改善の手法、改善実施時の課題について解説する。
仕事が男性的なものではなくなった
この2年あまり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが私たちの働き方を変えた。勤務時間はよりフレキシブルになり、ズームを活用することで互いの仕事を中断することも減った。子どもやペットが画面の後ろに登場し、同僚は「本棚の写真立てはあなたの祖父母ですか」などと個人的な質問をするようになり、仕事帰りに同僚と飲みに行く機会は減った。多くの点で、仕事は男性的ではなくなっている。
これはどのようなことを意味するのだろうか。
筆者たちは心理学の教授として、数十年にわたりジェンダーと文化と職場について研究してきた。2020年に発表した論文で述べているように、パンデミック以前は、ほとんどの職場に「男性的デフォルト」が蔓延していた。筆者たちが男性的デフォルトと呼ぶものは、ジェンダーバイアスの形態の一つで、男性に関連づけられる典型的な特徴や行動が報われ、標準的な慣習と見なされることである。たとえば、米国では、自己中心的、独立心がある、自己主張が強い、競争心が強い、リスクを取る、などの特徴が男性的デフォルトに該当する。
男性的デフォルトは、職場文化の説明(ウーバーの「攻撃的で制限のない」文化)や、男性社会にふさわしい振る舞いに報いる会社の慣習(グーグルで昇進するにはセルフプロモーションが必要)、女性より男性のほうが参加しやすいアクティビティを要求する資金調達の慣習(あるベンチャーキャピタルはカイトボードのイベントへの参加を条件にしている)などに埋め込まれている。このようなデフォルトは、最も効果的で生産的なやり方かどうかを疑うことなく、導入されることが多い(あるいは、無意識のうちに組み込まれている)。
男性的デフォルトは、職場にとって本当に必要なのだろうか。科学的に証明されている通り、仕事で成功するためには、男性的なステレオタイプと女性的なステレオタイプの両方が必要なのだ。これから説明するように、職場における男性的デフォルトを減らし、女性的デフォルトをより多く取り入れた結果、企業の評価が上がり、より多くのベンチャーキャピタルの支援を獲得し、新規採用者の潜在能力を最大限に引き出すことに成功するなど、多くの企業がその恩恵を受けている。
パンデミックによって、これまでの仕事のやり方は一つの方法にすぎず、必ずしも最善ではないことが明らかになった。対面も含むハイブリッドな働き方に適応して、職場のポリシーや規範、手続きを見直しているいまこそ、組織の基盤や構造、日常業務に男性的デフォルトがどのように組み込まれているかを詳しく検証する好機だ。
本稿では、男性的デフォルトが組織でどのように展開されているか、それが必要かどうかをどのように判断するのか、そしてどのように男性的デフォルトを取り除き、バランスを取ることができるかを考えていく。