罠に陥らないために

 組織の男性的デフォルトを特定して、取り除き、バランスを取ろうとする際は、筆者たちが見てきた経験によれば、企業が陥りやすい罠がある。以下に留意してほしい。

 (1)ジェンダーに関する情報を削除すれば十分だと考えている

 残念ながら、すべてのジェンダーを平等に扱ったり、応募書類からジェンダーに関する情報を削除したりするだけでは十分ではない。複数の研究が示す通り、応募者の名前やジェンダーの情報を評価者に見えないようにしても、男性的デフォルトに適した候補者にこだわる傾向がなくなるわけではない。

 (2)男性的なデフォルトに男性的なデフォルトで対抗する

 男女平等の取り組みの中には、実は男性的デフォルトをより強化しているものもある。グーグルが2014年に、昇進に自己推薦を義務付けたところ、女性が昇進する割合が男性より低くなった。ある技術責任者は、女性に自己推薦を促すメールを送ることで、この問題を解決したと考えた。自己推薦をする女性はたしかに増えたが、このようなメールは自己を売り込むという男性的デフォルトを強化して、女性にもそれに従うように求めるものだ。

 (3)男性的デフォルトを文化的に「よい」と見なす

 男性的デフォルトは文字どおりデフォルトであり、米国など西側の先進国では、しばしばよい行動や標準的な行動として規範化されている。この規範化が、男性的デフォルトを特定して一掃することをより難しくしている。多くの人が、男性的デフォルトは一部の集団に恩恵をもたらすものではなく、一般的に「よい」ものだと認識しているからである。

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 パンデミックは、男性的デフォルトを取り除く試みを前進させた。ベンチャーキャピタルのカイトボードのイベント「MaiTai」は、不要不急の旅行が制限されたために中止された。エアビーアンドビーは従業員に、住む場所や働く場所はどこでもよいという選択肢を与え、以前の男性的デフォルト(従業員はオフィスで仕事をするものだ)を取り除いた。グーグルは有給休暇の追加や「ミーティングをしない週」という形で「リセットデー」を設け、従業員のウェルネスやメンタルヘルスを向上させた。

 ただし、男性的デフォルトをめぐるすべての問題が、リモートワークで解決したわけではない。育児や家庭学習への参加が女性より少ないという男性的なステレオタイプは、いまも報われやすい。たとえば、男性は女性より多くの学術論文を発表している。リモート会議でカメラをオンにすると、男性より女性のほうが疲れるかもしれない

 パンデミックによって、職場文化が男性的に設計されていることが浮き彫りになり、さらに、男性的である必要はないこともわかってきた。従業員がオフィスに戻り始め、ハイブリッドやリモートの働き方を模索しているいまこそ、リーダーはすべてのジェンダーを受け入れる文化を考え直し、つくり直すチャンスだ。


"Rooting Out the Masculine Defaults in Your Workplace" HBR.org, October 21, 2022.