●予算サイクルを短くする
伝統的な予算策定のプロセスは、上場企業の実務と密接に結びついているため、多くの企業は年次予算を策定している。それは、比較的安定した世界では機能するが、物価、為替レート、新たな規制、新たなテクノロジーの発展など、破壊的な変化が起きた時に対応するのは難しい。そのため、計画を調整する間隔を短くする必要がある。
これはまさに、商品価格が下落した2015年に、ある大手多国籍鉱業会社と協働した際に、筆者らが経験したことだ。複数の金属価格が50%以上も下落したため、同社の年間予算は数日で陳腐化してしまった。しかし、従来の予算調整プロセスは複雑で、時間がかかり、微妙なニュアンスを含ませることにも限界があった。
同社は、承認された予算計画に固執すれば自滅してしまうことはわかっていた。損害の範囲や、多くの事業部門や地域の中で具体的にどの部分が最も大きな痛手を被るのかを把握できていなかった。
そこで、より短いサイクル(年単位ではなく四半期単位)に移行し、今後18カ月の見通しを立てることで解決を図った。現在では、データの変動がより高い頻度で反映され、予算が最新の状態に保たれている。
このような「ジャストインタイムの予算策定」という解決策は、2008~2011年の経済危機の際に普及したが、多くの人は、あくまでも一時的な解決策ととらえていた。いまでは、不安定性が恒久的なものとなり、このアプローチが定着すべき時であることを受け入れなければならない。
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これら3つの解決策のいずれを採用するにせよ、独自の方法を開発するにせよ、唯一はっきりしていることがある。私たちが直面している課題は、状況が安定するまで生き残ることではなく、絶え間ない混乱の中でどうしたら成功できるのかを学ぶことだ。
そのためには、組織の運営方法を刷新しなければならない。安定した世界で成功するためのルールと、不安定な世界で成功するためのルールはまったく異なる。混乱した状況に即応できるターゲティングと予算策定を行うことが、その出発点となるのだ。
"3 Ways to Bring Flexibility to Budgeting," HBR.org, September 28, 2022.