多くの組織は、面接がうまく機能していないことがわかっていても、代わりにどのような手法を取ればよいのかわからずにいる。

 適性検査は、気質に基づいて能力を見極めようとするものだ。ボットを利用したスクリーニングは、山のような履歴書を絞り込むには便利だが、柔軟性に乏しく、見落としも多い。仕事が定型的でなくなりつつある状況では、特に難しい。また、職歴は採用後のパフォーマンスを予測する材料にはならないことが多い。

 ゲーミフィケーションを活用した選考手法には有望なものもあるが、現時点では労働倫理や感情的知性(EI)、状況判断能力を測定するものがほとんどだ。採用前の人材評価技術は「未開拓分野」と呼ばれ、人種や性別、国籍などの保護されるべき特性について意図せぬ結果をもたらす可能性もある。

 だが、もっと優れた方法がある。筆者らが「実用最小限の能力の証明」(minimally viable demonstrations of competence)と呼ぶ方法だ。いったい、どのような方法なのか。

 これは、ポジションに期待されるパフォーマンスを、最小限の検証可能な仮説に凝縮し、採用候補者に課題として取り組んでもらい、実際にどのような行動を取るか見る、というものだ。この方法がうまくいけば継続すればよいし、うまくいかなければ、軌道修正すればよい。これは採用プロセスにおいて極めて有望な方法だと、筆者らは考えている。

 筆者の一人であるジェフ・ジョンソンは、自社のライター採用を何年か担当したことがある。この時、ジョンソンは電話で簡単な自己紹介をした後、シナリオに基づいたライティングの課題を出して、候補者のスキルを評価した。

 メディアの場合には、ライター候補者にライティングや編集のテストを行うことが多いが、ジョンソンの場合はさらに分析的なアプローチを取った。課題の提出を受けた後、候補者とフォローアップの会話を行い、そこに書かれている内容だけでなく、その課題を完成させるためにどのような選択をしたか、相手に話を聞いたのだ。

 このアプローチは、候補者の採用後のパフォーマンスを予測するのに役立っただけでなく、候補者自身が仕事の内容をよりよく理解する助けになった。採用する側が、タスクのさまざまな要素を実際のポジションに期待されることと結びつけて説明したからだ。

 この方法を繰り返していくうちに、やがては採用候補者の反応を蓄積したデータベースが構築され、次の採用では候補者をさらに上手に評価できるようになるという、ポジティブなサイクルが生まれる。

「この採用方法は画期的な変化をもたらし、優れた成果を挙げる『ロックスター』を複数採用できました」と、ジョンソンは語る。

「さらに、それまでほとんど検討対象にならなかった経歴を持つ人の採用にもつながりました。この方法では、履歴書や職務経歴書の内容をそこまで気にする必要がないためです。採用プロセスそのものが、相手が優秀かどうかを教えてくれるのです」