ここで少しばかり、「実用最小限の能力の証明」という名称について触れておきたい。
「実用最小限」とは、できるだけ簡潔なテストで必要な証拠を得ることを意味する。「能力の証明」とは、要するに、そのテストを通じて実際の仕事に必要不可欠なスキルを行動で示すことができる、ということだ。何らかのテストによって、相手の興味深い部分や重要な部分が示されたとしても、実際の仕事に必要な中核スキルが示されなかったり、採用後のパフォーマンスの予測材料にならなかったりすれば、意味はない。
「実用最小限の能力の証明」と呼ぶのは長いので、筆者らは省略して、このプロセスを「ザ・リビール」(the reveal)と呼ぶこともある。ポーカーの最後に、プレーヤーが手持ちのカードを開いて見せる時の表現にちなんでいる。多くのポジションにおいて、実用最小限の能力を証明することは、同じような意味合いを持つ。
当然ながら、労働条件にはさまざまな違いがある。やる気に満ちたライターに模擬課題を出したり、やる気に満ちたコンサルタントをワークショップのプロジェクトチームに参加させたり、やる気に満ちた女性の営業志望者に実際にコールドコールをかけてもらうのは簡単だ。
だが、身体の動きや不測の事態に対応する能力が最も重要になる製造のポジションの場合は、どうだろうか。あるいは、山火事の消火活動のように、まったく想像もつかないような状況で、予測不可能な物事に対処しなければならない場合はどうだろうか。
実は、そのようなポジションの採用活動でも、筆者らが提案するアプローチは有効だ。最近では、シナリオプランニングと人工知能(AI)を活用した仮想現実(VR)ツールを用いることで、ほぼすべての現実的な状況を再現できる。
そのような状況に対する人間の反応は従来のやり方では予測できない。ザ・リビールによって、ようやく目にすることができるのだ。
このプロセスは事業化しうるものだ。5人のライターを見つけるのと、数千人を採用するのとでは、大きく異なるからである。そこで一つ、ツールとして役に立つのが「採用前考査」で、通常は何らかのテストの形を取る。その原型は、中国古代の漢王朝に遡る。
このようなテストは、大規模かつ機械的に実施できることもあって、コロナ禍が到来した時、1万件の履歴書を1000件に絞り込む手段として広く採用された。それらの一部は、EIや労働倫理、あるいは基本的適性といった側面を測定するものであり、必ずしも採用後のパフォーマンスの予測に役立つ情報ではない。だが、上手に設計すれば、採用前考査は大きな採用プロセスの一部として、有効なツールの一つになる。