筆者らが働くデロイトでは現在、複数の技術に精通したフルスタックエンジニアを採用する際に、このツールを使用している。その根底にあるのは、採用候補者に実際に何かを構築するよう求める「実用最小限」のアプローチだ。これは、ソフトウェア開発分野が急速に進化しているため、職歴が相手のスキルを正確に物語る情報ではなくなってきたことが一因だ。
ソフトウェアエンジニアと名乗る人がいたとする。だが、現代的なデブオプス(開発チームと運用チームが協力してソフトウェアやシステムを開発・運用する手法)において、フルスタックで開発できる能力があるのか。デロイトでは現在、採用候補者の実際のコーディング能力に基づき、より焦点を絞った面接を行っている。
人間による評価は、いまも重要な役割を果たす。筆者の一人であるスティーブン・ゴールドバッシュはかつて、デロイトの新卒採用方針と一致しない人物をコンサルティング職に採用したことがある。それがエレンだ。
彼女は学位取得に5年かかっていただけでなく、
実際に面接を行い、課題を与えられると、エレガントで賢い回答を迅速に示した。それは、私たち数百人が見落としていたものだった。ボットを使っていたら、彼女を書類の段階で落としていただろう。彼女はいま、デロイトのM&Aプラクティスのマネージングディレクターを務めている。
人間の判断と慎重に練られた「リビール」を用いることで、「とにかく人材のパイプラインを厚くして、誰が生き残るかを見てみる」という、多くの企業が現在取っているアプローチに比べ、より焦点を絞り、採用後のパフォーマンスも確実に期待できる人物を採用できる。
このアプローチを幅広く実践している企業はまだほとんどないが、幸いなことに、従来の採用プロセスの正当性に疑問を投げかける企業も出てきているようだ。ゴールドバッシュとジェフ・タフの友人で、メンターでもあるジョセフ・フラー(ハーバード・ビジネス・スクール教授)は最近、このトレンドについて『ハーバード・ビジネス・レビュー』に非常に説得力のある論考を寄せている。
いずれ「採用面接」という常識は、焦点を絞った実用最小限の能力を証明する方法へと進化し、最終的にはおそらくは1日か2日の実務を行う「ライド・アロング」が当たり前の時代が到来するのではないだろうか。いわば、何の義務や条件もない企業版の「お試しデート」だ。
もっとよいのは、「ギグエコノミー」を恒久的なパイプラインに変えることだろう。フリーランサーに単発で仕事を任せてみて、最高のパフォーマンスを見せた人物を、割増報酬で正社員として迎え入れてはどうだろうか。
これは、さらに多くの企業が試してみるべきアプローチだ。
"When Hiring, Prioritize Assignments Over Interviews," HBR.org, September 27, 2022.