(3)適応型の会合
適応型の会合は、複雑な、あるいはデリケートな問題に向いている。何が適切なプロセスで望ましい結果なのかが事前に明確ではないような問題である。この場合、不可欠となるのが俊敏さと細やかさだ。例としては、戦略策定セッションやイノベーション・スプリント、キャリアに関する話し合い、社会問題からの影響を組織として乗り切るための議論などがある。成功させるには、3つの条件が必要だ。
柔軟で独立した環境
筆者がデザインコンサルティング会社IDEOにいた頃、クライアントとの会合はほぼすべて適応型だったので、チームミーティングのスペースとは別の部屋が好まれた。理想的なのは、家具や備品が移動可能で、動き回ることができて、組織のヒエラルキーを示唆しない空間だ(重役会議室は即アウトである)。空間はコミュニケーションに影響を与えるため、参加者にとってどの場所で開催されるかが「これから始まるのはありきたりの会話ではない」というヒントとなる。
オンラインの場合は、カメラに囚われない工夫をしよう。ブレインストーミングなら、カメラをオフにして、デジタルホワイトボードに集中するセッションを設計するとよい。またデリケートな話し合いを主宰する時は、ボディランゲージが重要な意味を持つことを踏まえ、参加者にはデスクの前ではなくソファか椅子に座ってもらい、カメラをズームアウトして、緊張感を和らげ、全身からのサインをとらえられるようにする。
安心感
従来、難しい議論やデリケートな話し合いは対面で行われてきたので、ボディランゲージを観察したり、物理的環境を利用して安心感を醸し出したりすることができた。しかしコロナ禍を経て、対面は必ずしも必要ではなく、望ましいわけでもないことがわかってきた。たとえば、キャリアに関するデリケートな話し合いは、直感的には対面にすべきと感じるかもしれない。だが筆者は、複数の従業員からオンラインのほうがよいと言われたことがある。スクリーンを介することで、感情を抑制でき、コントロール感が高まるという。場所の設定については、従業員の自主性に委ねよう。オンラインを好む人もいるし、歩きながら話したいという人もいる。
緊張をほぐすためのガス抜き
複雑な問題はしばしば時間の制約を伴うが、ガス抜きすることでうまくいくことがある。落ち着いた状態で結論にたどりつくために、選択肢を話し合う時と意思決定の時とで間をあけるとよい。室内ならば、コーヒー休憩を取って、主題とは関係のないことで笑い合うことができる。オンラインならば、少し外に出て休憩しようと参加者に促し、その際には議題について考えないように、と言うこともできるだろう。このような気分転換は些細なことではなく、成果を上げるために不可欠な要素である。
筆者がリーダーを務めた分散型の組織では、感情を揺さぶられる出来事があった後で、新しい指針の枠組を構築する必要があった。そこで、緊張をほぐすために会議の流れと構成を変えることにした。最初に、小規模なデジタル上のラウンドテーブルを開催して、出来事を振り返った(問題点を評価する際に感情が表に出るのを許容した)。次に、さまざまな立場の個人と1対1の面談をして、多様なニーズを理解した(1対1の親密な場では、安心して弱みをさらすことができた)。そして最後に、新しい枠組を構築するためのセッションを行った(その時までに、最初の2つの段階で表出した感情は十分に解消されていた)。
3つすべてがあてはまる、またはどれもあてはまらない会合ではどうすべきか
以上の3つのタイプの会合は、成功に必要な条件がそれぞれ違うとはいえ、合体できないわけではない。たとえば一つのオフサイトミーティングで、関係を築き、複雑な戦略的課題に取り組み、業務を処理することもできる。それぞれについて条件を設定することが大切だ。普通に仕事をしていたら出会わない人々を混ぜたり組み合わせたりし、戦略的な議論に息抜きの時間を入れ、個々のアクティビティのタイプに合わせて別のスペースを利用する。
業務処理型にも、関係形成型にも、適応型にも当てはまらない会合もあるだろう。それはそれでよい。なぜ集まるのか、何を達成しようとするのかを常に問うことが、効果的な会合を実現する道だ。そして、それぞれのニーズにふさわしいスペースと場所を用意しよう。どのような周期で対面で集まるのが最適かを知ったら、あなたは驚くかもしれない。チームのニーズによって違いはあるが、週1回というより、月1回、四半期に1回、またはプロジェクトの流れによって決まることが多いのだ。
たとえ組織全体を変えることができなくても、あなたが直接関わる会合を変えることはできる。理由にかかわらず働く場所を規定する会社の指針の下でも、スケジュールのパズルからスタッフのニーズへと優先順位を変えることによって、会合の実施方法は刷新できるのだ。
"3 Types of Meetings - and How to Do Each One Well," HBR.org, September 29, 2022.