●意図的

 対面でつながる効果は、ただ自然と湧いて出てくるものではない。表面的な会話や世間話以上のものを、構造的・非構造的な方法で促す状況をつくらなくてはならない。長年にわたる研究からは、社会的な結びつきを強める傾向のある活動が明らかになっている。以下は、その一例だ。

・ゲームや創造的な問題解決:協力、協調、同期の機会をつくる。最近の研究では、物理的に一緒にいるほうが、チームの創造性が高まることが示唆されている。これは、ビデオ会議の技術によってコミュニケーションの要素がスクリーン上に集まり、比較的狭い範囲に認知が集中することで、創造的なアイデアの創出が抑制されるからだ。

・ストーリーテリングと視点の共有:自己表現、共有体験の発見、そして肯定と共感の機会を提供する。

・リチュアル(儀式や習慣)への参加:共通のアイデンティティやグループの一員であることを示す、意義深い行動をともにする「共体験」の機会を創出する。

・楽しむこと:ユーモアや笑い、音楽、ダンスなどの自然な動き、空想、期待、驚き、そしてもちろん、おいしい食べ物や飲み物は、人間にとって普遍的な喜びの源である。私たちは喜びや楽しみを分かち合える人と、より強い絆を感じるものだ。

 物理的に一緒にいることで、これらの活動の影響は増幅されるものの、バーチャルであっても強力な効果を利用することは間違いなくできる。多くの場合で課題となるのは、バーチャル環境で上手に機能するものを見出すことだ。

 アーンスト・アンド・ヤング(EY)では最近、チームの結束を高めるために、バーチャルでも対面でも楽しめる、数多くのゲームを集めたオンラインリポジトリを構築した。ゲームは、時間、チームの規模、進行のしやすさなどの条件から絞り込むことができ、チームのニーズに最適なアクティビティを見つけることができる。


 私たちがこれまで当たり前だと思っていた働き方は、永久に崩壊したといえるだろう。後戻りすることはできないが、それはけっして悪いことではない。

 たしかに、私たちには解決すべきことがある。よりよい未来を手に入れるためには、「人々のエンゲージメント、満足感、生産性を高めるには何が必要か」に関する思い込みを、批判的に問い直すのをいとわないことだ。

 すぐに「簡単な」答えを見つけようとするのではなく、現実の変化とそれに伴う厳しい選択を受け入れなくてはならない。さらに、従業員の声に耳を傾け、彼らの判断を信頼し、人間の行動科学を駆使して、従業員がつながり、成長するための最適な環境を整えることが欠かせない。

 心配は無用だ。私たちは、そのコツをつかむことができる。

HBR編注:本稿に示した見解は、筆者らのものであり、アーンスト・アンド・ヤング(EY)およびEYのグローバル組織の他のメンバーの見解を必ずしも反映したものではない。


"4 Myths About In-Person Work, Dispelled," HBR.org, October 05, 2022.